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教育実習生の話 ページ44

麗白は再び、いつもの日常を取り戻していた。
本日は実力テストの期間であるが、授業は普通にある。
だが彼女は特に勉強の心配はしていない。
教育実習生の教員と共に過ごしているのだが、実習生は彼女の勉強法に感嘆した。


彼女は勉強を知ってるのでなく、雑学を知ってる。


教科書に示されてる内容を深く理解しているといえば聞こえは良いのだが、雑学を通じて正解を覚えているのだ。
社会、国語、理科はそれで満点を出している。
言葉は直接的の方が良いが、勉強は間接的の方が良い。
それに楽しい雑学を知ってるついでに答えを覚えてる。
実習生はそれを参考にしていた。
無駄な知識は無いと知らされてしまう。


「…………今どき、教えるのは先生だけではない。より多くを知るは研究者じゃ。そんなやつらが分かりやすく編集した動画を出した方が何倍も分かりやすいのは当たり前のことじゃ。じゃが、先生はその教える点を他に委ねてもよいと思っておる。ただでさえ、教員は生徒のために時間を割かねばならんのに、教えることに創意工夫を頭を捻っている間に、動画編集者はそれを終わらせる」


そして今の教え方に哲学的な屁理屈を捏ねる。


「教師の使命とは『勉強というものを教える』のではない。『継続は力なり』を教えるのじゃ。如何なる継続も己の自信に繋がる。それを万人に説くのが仕事じゃ。その世の中を変えるのは難しいが、じきに時間が解決するじゃろう」


「なんか、先進的な考えですね」


「当たり前じゃ。情報が行き交うネットの時代じゃぞ?教師はパソコンに向かって文字の羅列を見るのが好きかえ?それよか、分かりやすい奴に全てを投げてもよいと考えておる。それは生徒の中で『利用できるものを何でも利用する』という考え方を定着させるのじゃ。教師の負担はそれで大幅に減る」


「……でも、生徒との距離が離れませんか?」


「それは無いじゃろう。多くの動画を見ることによって、距離は縮まるはずじゃ。多くの考えに寄り添い聞くことは、時に相談を受けた時に大きな助けになるはずじゃ。現代の若者のジレンマ、特有の悩みを解決できる糸口が見つかるやもしれぬ。もちろん、推測の域をでないが、そうすべきだと考えておるよ」


「すごいですね、麗白さんは。すごく理想的なことを……」


実力テスト以上に大切なことを語っているふうに、彼女たちの間では授業ではなく互いの論争が行われていた。

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作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時

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