お好み焼きの話 ページ40
黄瀬と笠松と別れた彼女は、お祝いの言葉を送るために誠凛の控え室へ向かう。
しかし、控え室は地獄絵図そのものだった。
「お祝いに来たぞ。リコ」
「ちゃーんと見てくれてた？予選突破よ！！」
「ああ、流石じゃ。ところでこの屍のような男どもはどうするんじゃ？火神に至っては動けていないじゃろう」
他の選手たちは辛うじて動ける者もいるが、火神はちょっとやそっとでは動くことは出来なかった。
腰を支えて唸ってる以上、誰かが運ぶしかない。
「私が支えてやろうか。どれ……」
「アンタは流石にダメでしょ！誰が火神君背負うかはジャンケンで決めましょ？」
「リコは私が年寄りか何かと勘違いしておるのかえ？」
普段自分のことを年寄りとか自称してる癖に、変な時だけ若い感を出す。
だがリコは、流石に杖を付いてる女性に大柄な男を背負うなど、そんな居た堪れないことはしない。
結局、ここは早く空けなくてはならないので結局は誰かがジャンケンをして背負うか決めてから出るしかなかった。
携帯で近くの店を検索し、お好み焼き屋があることを知ってそこに入ろうと話になった。
「黒子、テメェ覚えとけよ……」
「くははははっ。予選突破の良い勲章を貰えたではないか？のう、黒子？」
「すみません、重かったので……僕に意見を求めないでください。そういうつもりで落としたわけではありません」
「こいつ…！」
火神は麗白の頭をがしりと掴んで力を込める。
「あいたたたたた、年寄りを労らんかいたたたた……」
「都合よく年を利用すんな。あとお前は俺と一歳しか違わねぇだろ！」
「すまぬ、すまぬて……止めておくれ…」
はじめての反撃に彼女は為す術なく降参した。
彼女の頭から手を離すと、目の前にやはり見覚えのある人を見つけた。
「黄瀬と笠松！」
「呼び捨てかオイ！」
「うぃーす」
家族席には誠凛の選手と麗白が座り、黄瀬と笠松には黒子と火神が座った。
「ふむ……お好み焼きは初めて食べるな」
「マジですか？じゃあ、美味しいものを作るんで食べましょう！」
「ソースの匂いが唆るのう。作ったことないから、よろしくたのむ」
「任せてください！」
ガラリと再び誰かの来客。
この近くだから選手か、それとも観覧席にいた客か。
「あ、今日戦っていた緑色のと黒いのではないか」
まさか彼らが此処に来るとは思わず、誠凛も他のメンバーも目を丸くした。
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作者名：ほんばし | 作成日時：2022年5月6日 16時
