彼氏の話 ページ34
流石に黒子も火神が反応するとは予想できず、バスケ部員たちは餌を見つけた獰猛な獲物の如く火神を揶揄った。
「火神……お前まさか麗白のことが好きなのか?」
他の部員たちは火神の反応が待ち遠しかった。
慌てふためくか、それとも照れるか。
他にも予想外な反応をしていれば、御の字。
さあ……と火神の反応を待つ。
「あっ、イヤべつに、そういうつもりじゃ無いッスけど……」
予想外な反応に一同は動揺を隠さずにいた。
これは確定。
「火神ィ、隠さなくていいんだ。あそこにいる小金井と伊月は一度告白してるからなあ〜」
「なんでまた言ったの!?」
「いいだろ別に!」
別方面へ飛び火したが、ここで更にカオスな展開が生じる。
「そういや、福田がすでにラブレター渡してた!」
既に落ちていた者が、そのことを思い出した口に出してしまった。
口に出した張本人の降旗に、福田は詰め寄った。
「なんで今言ったぁ!?」
「それより、返事あったのか…?」
福田はそれ以上何も言わなかった。
落ち込み方を見るに、結果は玉砕だろう。
「んで、火神は何が気に食わないんだ?」
「いや、たしかアイツの付き合ってた男って……」
ぽりぽりと言いづらそうに頬を掻いていたが、そこまで焦らされてしまっては気にならない者などいない。
それに、あんな癖の強い彼女に彼氏がいたこと自体が初耳な者もいるため火神を焦らすと、渋々と言った様子で教えた。
「確かアイツの彼氏、向こうでも悪い噂しか聞かない相当なクズ野郎だったような………です」
麗白雪の彼氏は向こうで悪い噂しかないとんでもないクズ野郎。
そのことに一気に保護者と化した誠凛ズは彼女の心配をし始めた。
「もしかして、そっち専門!?」
「クズな男が好きなのか?」
「ちょい静かに!!」
リコの声が体育館中に響き渡り、バスケ部員たちは其々の考察を言うのを止めてこう言い切った。
「その張本人からは、そのクズ野郎とは喧嘩別れしたと聞いてるわ。だから今は、大丈夫……な筈よ」
一同は胸を撫で下ろす。
良かったぁ〜っ……と。
火神でさえも胸を撫で下ろす様子を見るに余程のクズ男なのだと伺えた。
「さっ、雑談終わり。練習を再開するわよ!」
リコによるインターハイの猛特訓が始まる。
一方の彼女はと言うと、早く帰れたのでそそくさとラフな格好に着替えてからインターハイの為にぐっすりと眠っているのであった。
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作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時