お叱りを受ける話 ページ20
ゴンッ、と頭に衝撃が走る。
拳のゴツゴツとした部分が頭にめり込んで痛そうに疼くまる彼女はリコから大層怒られていた。
あそこまでする必要性はない。
黄瀬にも不備があったかもしれないが、貴女のはやり過ぎだと。
そうしたお叱りを受けた矢先に、他一年生が彼女に切り出した。
「あの……もしかして幽霊さんですか?」
その問いかけに2年生は禁句でも言ったかのように、足元から冷えていく感覚がして1年生の口を塞いだ。
「おや、私は幽霊だったのかえ?」
何とも気にした様子はなく、幽霊という言葉に彼女は浮かれた様子で自身を指差した。
禁句だと思っていたワードがそうでなかったことに、胸を撫で下ろす一同。
「いえ……そういう噂があったもんだから」
「近くで見ると幽霊じゃなくて、安心したのかえ?」
「はい、なんというか……すっごく綺麗だなって」
「ふふ、そのような気遣いができるとはお主も中々に口が上手いのう。降旗…だったかの」
「っ、は、はい!」
名前を呼ばれて嬉しかった降旗は元気よく返事をした。
他の部員たちも恐らく名前を覚えられてるようだが、意図して言っていないことに気付いたのはその時だった。
「あ、あの……俺たちの名前、知ってるんですか?」
「もちろんだとも。屋上宣言、実に素晴らしかったぞ。特に福田、お主は苦労したのう」
「は、はい…!」
あんな長話を聞いていた人がいたのかと周りはひいていた。
だが、それすら聞いていると言うことは彼女の関心はバスケではなく選手に注がれてると見て間違いなかった。
「それからお主も。私を幽霊だと思って見ていたのかえ?」
「い、いえ……。同じく綺麗だな、と」
「そうか。ありがとう、河原。例えそれが言葉だけでも嬉しいものじゃ」
「はわぁ……」
こうして3人を褒め倒していく彼女は3人を完全に骨抜きにする彼女のスタイルに壮観させられる。
同時に、2年生は彼女の男の扱い方が妙にうまいので少し警戒した。
「さっすが誉め殺し……俺らも最初はあれに骨抜きに気がする」
「小金井は麗白にノリで告白してたよな」
「なんでいまバラしたの…!?」
「人の良いところを見つけて褒める。してることはそれだけなんだよな」
「だけどなんか……男の扱い方が分かってるような」
「……」
水戸部も心当たりがあるのか、彼女に対しての誉め殺しには嬉しい反面なにか企んでるのではと疑念に思ってしまうのだった。
20人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時