模倣少年の話 ページ17
「……」
どう見ても、見慣れない服装。
それに誠凛では見かけなかった出立ち。
雪は残念ながらそこまで寛容ではない。
何故なら、来校の予定者などおらず首から入校許可も下げていない。
そして彼女は私的な要因ではあるものの人混みを好んでおらず、メディアが来る際には必ずそれを把握する。
「あれ、遅れてやってきたファンの子っスか?」
白髪のハーフアップ、それにふわふわとした毛色。
黒い眼帯を付けており、その上から更に覆うように下げられた白い前髪は顎で切り揃えられている。
青い目をしており、側からみれば外国人にしか見えない。
まさしく
「……」
無言のまま近寄り、黄瀬涼太の近くまでジッと見上げる。
他の部員たちはこの行動をあまり知らず、2年生たちも初めて間近で見る彼女の行動にヒヤヒヤとしていた。
「あ、えっと…、なんスか?あっ、もしかしてラブレターっスか?キミみたいな子に告白されるのはなんか嬉しいっスけど、今はそんな気はないかなって。だから、ごめんなさいっス!」
そして火神は過去の出来事を思い出す。
過去の回想を思い出し、彼女に宿る感情を読み取ることができた。
あの微笑み方、怒ってるなと。
「それは、何に対して?」
女性とは思えないほどに低い声に黄瀬はもう一度、彼女の顔を見つめる。
「何って……告白、じゃないんスか?」
「お主は何者か?」
「え、えっと…黄瀬涼太っス!ほら、モデルの!」
「そうかえ。それで?お主は何故ここにおる?」
「(何なんスか…この女)黒子っちいるんで、会いに来たんスよ!」
「ほう。それで。それ以外に用事は無いのかえ?」
「無い、ッスけど…」
「入校許可証は?」
「えっ」
「入校許可証」
黄瀬は事前に知らせたわけではなく、完全なサプライズとして来たつもりだった。
だがそれを誰かに咎められるとは思いもせず、笑って誤魔化そうとした。
「無いっ…スねぇ」
「ならば、分かっておろう。入校許可なく立ち入るのは誰がするのかを」
そう言って携帯を取り出した。
「学校に侵入した不審者じゃよ」
手早く通話をかけ始めた。
誰もが大いに止めた。
特に黄瀬は慌てた様子で狼狽えていた。
「ち、違うっスよ!!俺不審者じゃないっス!ほら、モデルの黄瀬涼太っスよ?」
「知らん。入港許可証も持たず、何がモデルの黄瀬涼太だ。出ていけ」
そういう意味では、彼女は厳しかった。
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作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時