傍観席の幽霊の話 ページ1
「あの、俺不思議な噂聞いたんですけど……」
春の暖かい風が、桜の花弁を新入生へと届ける季節。
新学期と共に気合が入っているのが部活。
そして、体育館に揃ってる男子学生が入部をする前に、すでに揃ってこの空間に緊張すらしてない先輩らしき人たちに手を上げて問いかける。
「ここのバスケ部……幽霊出るって聞いたんですけど」
その噂に先輩と思しき人たちは思い当たる節を記憶から探る。
幽霊……そんなものが既に出来ているとはいえ、バスケ部はおろかこの学校はできて2年の新設校。
そんな恐ろしい噂が流れるのは早すぎる。
ましてや、体育館の下にそういう物が埋まってるわけでもない。
しかし新入生の間で噂になっているということは、もしかするとと思い、ピンクのホイッスルを首から掛けた女子が噂を聞いたと言った新入生に問い詰める。
「それ、誰から聞いたの?」
問い詰められた新入生は、しどろもどろになって答えた。
「新聞部の先輩だった気がします…」
その言葉を受けて、彼女は頭を抱えると新入生の頭に一発拳骨を入れた。
「真偽は兎も角、うちの体育館に幽霊はいないわよ!」
「でも……見たことない人がいつも体育館を見下ろして……」
とまで口に出した新入生は、二階を見上げたまま固まってしまった。
二階を見上げたまま固まった新入生に他の生徒も二階を見上げると、そこには逆光に照らされた黒い人影の姿があった。
後光が差しており、その顔は明らかになっていないが、確かに此方を見下ろしてる人がいるのは確かだった。
「でででで、出たーーーー!!!!」
身の毛がよだつ恐怖に耐えかねた新入生たちは真っ青な顔をしながら悲鳴を上げてしまう。
「落ち着けぇ!!」
ところが、悲鳴を上げた途端に眼鏡をかけた黒髪短髪の重低音が体育館中を包み込む。
その一喝で絶叫をあげる新入生はシン…と静まり返る。
静まったところで、彼はもう一度彼らにこう言った。
「あいつは歴とした人間だ。幽霊じゃねぇ。だが、俺たちは別に気にしなくて良い。上のヤツは好きにさせておけ」
「日向君の言う通りよ。それに、見られて練習が出来ないんであれば元も子もないわ」
彼女の言う通りであった。
たとえ、上に人がいたとしても練習をしなければならない事に変わりはない。
上での視線に気を取られ、練習に支障が出るのであれば本末転倒である。
「……あいつは」
ただ一人、その場でその人影に心当たりがある奴が現れるまでは。
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作者名:ほんばし | 作成日時:2022年5月6日 16時