Hope for eccentric 2 ページ24
「お師さん……ご飯、食べへん?」
静かに、扉を叩く。……返事はない。
「おれ、ご飯作ったんよ! お師さんみたいに上手くはいかれへんけど……やっぱり、食べへんよな」
やはり返事は、何もない。
*****
「なあ、理詩央やったよな? 少し時間ええ?」
今日も真面目に授業を受けた、その昼休み。
逆先くんは授業こそ出ていないが、一応引きこもるのはやめたようで、よかったと一安心していた時。
珍しい人物に声をかけられた。
…いや、クラスメイトだけど。
「うん、合ってるよ。えっと…影片くん?」
「あ、おれのこと知っとったんやな」
「クラスメイトじゃん」
斎宮先輩の大事な後輩だし。
…まあ、斎宮先輩ツンデレだし、信じないだろうなー。
「それで、俺に用かな?」
「ああうん。……お師さんのことなんやけど…」
……斎宮先輩について。まあ、予想通りだな。
今学院にいて、話しやすい斎宮先輩の知り合いっていうと……まあ、俺か鬼龍紅郎かだ。
その鬼龍紅郎も最近蓮巳先輩と共にいることが増えたらしいから、生徒会嫌いの影片くんはあまり話したくないだろう。
あと先輩って声かけにくい。
逆先くんが滅多に現れない今、話しやすいのは俺なのだ。
「斎宮先輩について、か。……影片くんは何をしてほしいの?」
「お、おれはお師さんが早く元通りになってほしい! お師さんは夢ノ咲の帝王で、最強なんやから!
……それにおれはお師さんと…なずな兄ィと共に、もっとライブがやりたい」
後半、絞り出すように告げる。
……もう仁兎なずなは抜けたはずだけど、まだ彼は信じていたいのだろう。
裏切り者は嫌うべき、という固定概念によって影片くんは仁兎なずなを嫌うけれども……やっぱりそれでも、共に過ごしてきた日々の記憶は消えないから。
「影片くん。確か今、斎宮先輩は家にずっといるんだよね?」
学校にも来ていないはず。
彼の牙城とも言える手芸部には、青葉つむぎもいるから。
「そうやで。毛布被って、マド姉と話しとる」
……マドモアゼル。もういるのか。
確か斎宮先輩と影片くんは共に住んでたはず。
なら……。
「今日の放課後……君達の家に行ってもいいかな?
俺と……もう一人で」
「もう、一人……?」
俺の言葉に、彼は首を傾げた。
しかし、すぐに頷く。
──影片みかは、自分の意思を持たない人形だ。
しかし。その持ち主のためならば。
大切な人のためならば、彼は自分の手足を動かすのだ。
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詅(プロフ) - 一期雨楽♪さん» こんにちは。泣きそうになるくらい嬉しいお言葉でした。私の書く話で誰か一人でもあんスタ!の世界を好きになってくれるのなら、それ以上のことはありません。今は更新ができていない状態ですが、必ず続きを載せますのでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月23日 18時) (レス) id: a7c8dc252c (このIDを非表示/違反報告)
一期雨楽♪ - わたしは・・・・この小説を見て、あんスタを知り、どんどん調べていって流星隊推しになりました。見つけれてよかったとおもいます。ありがとうございます!! (2019年7月16日 20時) (レス) id: a5d56a5b82 (このIDを非表示/違反報告)
詅(プロフ) - カグサさん» ありがとうこざいます!理くんすごいですよねー…。作者の私でもたまにハイスペックだなあと思ってしまうこともありますし。応援ありがとうこざいます。これからも頑張らせていただきます! (2017年12月27日 21時) (レス) id: 1f05f5b54d (このIDを非表示/違反報告)
カグサ(プロフ) - 夢主くんの性格に惚れました!!更新楽しみにしてます!微力ながら応援させていただきます♪ (2017年12月27日 20時) (レス) id: 754d74c58c (このIDを非表示/違反報告)
詅(プロフ) - 暁さん» ありがとうございます!楽しんでいただける方がいると、こちらもやりがいが出るので嬉しいです。 (2017年12月27日 2時) (レス) id: 1f05f5b54d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:詅 | 作成日時:2017年12月17日 20時