その道の先へ－炎のゴブレット① (ページ22)

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違う、貴方じゃないページ22

スネイプに暗い瞳で見つめられる中、彼女の中に在ったのは恐怖だけだった。

怖い怖い……ひたすらそれだけ。

私は何でここに？私はこの人に何で目を付けられるの？

Aは助けを求めていた。ギルガメッシュに、そして……。

「助けて、よ……」

「ほう？あの言峰綺礼に助けを求めているのか？」

ギュッと目を瞑り、頭に浮かんだ人物に思わず口に出して、彼女は助けを求めていた。

Aは目を開け、スネイプを見る。

彼は苛立たしげに、Aを見返していた。

「あの男より、我輩を見るべきだろう？
あいつは何人もの人間を殺したらしいと、ジルは言っていたぞ」

「……あ」

「その綺礼とやらに貴様は好意を抱いている様だがな、大罪人だ。
我輩の方がまだマシだぞ」

それはスネイプからの、愛の告白だった。

歪に歪んだ。ジルは言っていた。

セブルスに迫れて落ちない女はいないわ、だって夢小説でも大概の夢主はチョロイもの、とスネイプは聞いた。

夢小説とか夢主は分からないが、ジルが言うのだからそうなのだろう。

やがて黙っていた彼女から言葉が紡がれた。

「違……」

「ん？」

「違う、貴方じゃない」

スネイプは愕然とAを凝視する。

その視線に怯えながら、彼女は。

「貴方は見てもいないのに、ジルの言う事を信じるのですね」

「我輩はだって……その綺礼とやらに似てると」

「綺礼さんと貴方は似ていません。言葉遣いは似ていますが、その他は全くです。
貴方と綺礼を重ねた事は、1度もありません」

言葉の途中から彼女の表情が、決然としたものになる。

スネイプの言動から怯えは成りを潜め、今は怒りが優っているかの様な。

スネイプはそんな彼女に何を言っても無駄だと悟り、杖を出してドアの鍵を開けた。

「もう出て行け。しかし、我輩の告白を断った事を後悔するぞ」

「いつかそう、ですね。いつかは後悔するかも知れません」

それだけ言い残して、Aは部屋を出て行った。

部屋を出る際、スネイプからの盛大な舌打ちが聞こえたが、足を止めなかった。