【ダイヤのA】イケ捕に惚れられたらしいんですが。《御幸一也》 (ページ17)

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その１６。ページ17

「美岬ー？ちょっと良い？」

「良いよって言う前に入ってきてんじゃない。

というか、練習時間削って来るなんて…何かあった？」

その日の放課後。

多分仮病を使って休んだと思われる美岬の部屋に
私はいつもの、バドミントンで有名な某会社の名前のロゴが入った練習着を着て訪れた。

怪しまれないように部活に少し参加して、部長である知捺さんに
“頭痛がするから保健室に行ってくる”

と後ろめたい嘘を吐いてからここに来たのだから

練習着なのは当たり前だけど。

美岬がベッドから体を起こして、私を見る。

私はそのベッドの近くに座ると、美岬にこれ以上喋らすまいと話し出す。

「ねぇ美岬。後輩のことなら気に病む必要はないよ。」

部屋に入ってきて早々、無駄話もせずにそう切り出した私に

美岬は驚いたように目を見開いた。

「誰だって、最初のうちは先輩は怖いものだよ。

でも厳しくするのが本人のためだから、仕方ないじゃん。

美岬は後輩に好かれたくてバドやってるわけじゃないでしょ？

自分が全国優勝したいから、バドが大好きだからやってるんでしょ？

なら極端な話、もう後輩に嫌われちゃっても良いじゃん。

嫌われ者の役割を率先してできるリーダーって、格好いいと思う！」

息継ぎもろくにせずに喋った私は、言い終わると肩で息をした。

すると、美岬はぷっと吹き出して笑い出した。

「ははは、Aがそんなに必死なの、珍しいね！

普段、捲し立てて話すなんてこと絶対しないじゃん！

…ありがとね、A。吹っ切れたよ。

まぁどうせ、御幸に相談したんだろうけど？」

に、と意地悪そうな笑みを浮かべて美岬は私をからかう。

いや、なぜ御幸に相談したことがバレてる…？！

「A一人じゃ、こんな開き直ったような答え出てこないでしょ？

“私が頑張るから、美岬はもう無理しなくていいよ”
って言うのが、Aだから。」

私の心を読んだのか、美岬は得意気に笑う。

元気になったんじゃん。良かった。

イケ捕くん、様様だなぁ…

イケ捕くんの言葉一つ借りただけで、人を勇気付けることができるなんて。

やっぱり、イケ捕くんは主将にある意味向いてると

私は思った。