＊この世で最も美しく、哀しくない話part６＊ (ページ8)

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A「････あのさ」

和「なに」

A「私のことさ」

和「ん」

カチャ、と和也の箸がお皿に当たり小さく音をたてる。

フワフワとあがる湯気。

２人共観ていないテレビでアイドルが歌ってる。

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A「･････その･･･いつから？」

和「いつから好きだったかってこと？」

和也の言葉に、思わずむせる。

A「･･そ、う･･･」

和也の横顔は今日も白く、いつもと何も変わらない。

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和「内緒」

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口元だけで笑う和也は、面白そうに私を見た。

その眼差しにドクン、と胸が高鳴る。

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和「死ぬ時に教えてやるよ」

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その言葉が、この先の未来を一緒に歩いていくんだって、教えてくれる。

･･････私達は気持ちが通じ合った今日でさえフレンチじゃなく湯豆腐で。

愛の言葉を語りあったり、ハニーやダーリンやかじゅかじゅなんて言わなくて。

私は相変わらず色気のないカピバラだし。

和也は相変わらず意地悪だし。

春菊は私のお皿にばかり入れるから、私のお皿は緑緑してるし。

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それでも、幸せだ。

すごく、すごく、私は幸せだ。

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和「カップルらしく今夜は一緒に風呂入るか」

A「え！！！」

和「もーぅ舐めまわすように見ちゃいますから。貧相な胸も、胸より出た腹も、

デカイケツも、セルライトも････」

A「うるさいな！絶対見せてやんねぇ！」

和「胸じゃなく腹揉んでたらゴメンネ？」

A「揉っ･･･････！」

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和也はクククと笑いながら湯豆腐を食べる。

友達から一気に超えようとする一線はやっぱりどこか怖くて、嬉しいのに怖くて、

私はドキドキした。湯豆腐が通った喉よりも、心臓が熱い気がした。

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和「････そんな脅えなくてもイキナリしません～～～笑」

和也がまた私のお皿に春菊を入れる。

ううっ、相変わらず平然とした顔しやがって。

くそぅ、ドキドキしてるの私だけ？

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和「あ」

和也が箸を置く。

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和「キスはする」

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そして触れる、唇。

････････････ああ、私。

湯豆腐みたいに心臓がグツグツ熱くて、煮立ってしまいそう。