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スマホからはツーツーという機械音が虚しく響いている。


「はぁ」





てか、マジ溜め息吐きすぎだな俺。

さっき、Aに言われたばっかなのに…。


「幸せになれない訳だ」


そう呟きながら窓ごしにAの姿を見る。




アイツ寝てんじゃん。



あれだけ公式覚えておけって言ったのに。


リビングのソファに寄りかかりスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。

俺はリビングに戻りAを起こそうと肩を揺すった。


「おーい!! お前まだ勉強の途中だぞ」


「う〜ん、yの二乗…」

Aの口から出たのは、たぶん今覚えようとしていた公式の一部分だと思われる。


「ぶっ!!」


俺はAの寝言に思わず噴き出してしまった。


夢の中でも勉強するなんて結構器用な事するな…。
残念ながら成績は超が付く程悪いけど…。

なんて思いつつも少し寝かせてやる事にした。


でも、中途半端に寄り掛かっている所為か上半身が半分傾いている。


「お前、このままだと床に頭ぶつけるぞ?」


なんて言ってもピクリとも動かない。


「ったく…小学生かお前は。」

半ば呆れたように笑い
俺はAの両脇に手を通すと
小さい子を抱っこするように
その体を持ち上げた。

「ぅわっ、軽っ!!」

抱き上げた瞬間、(失礼だけど)もっと重量感があると思っていたのに、Aの体は想像以上に軽かった。

ねえちゃんと食べてる?

なんて事ある訳ないけどマジでそう思ってしまうくらい軽かった。


とりあえず、すぐ後ろにあるソファにAを横にする。


「もっと食え」

俺は小さく呟きながら、Aのおでこをペチッと軽く叩いた。


「ん…」


一瞬、目を覚ますかと思ったけれど、起きる気配はなかった。

「どんだけ熟睡してんだ」

思わず、顔から笑みがこぼれた。




さて…、俺はAが起きるまで仕事の続きでもするか…。

そう思い、ガラステーブルの近くにあった鞄からノートパソコンと眼鏡を取り出す。



「っくしゅん…」



その瞬間、Aが不意にくしゃみをした。

隣でスヤスヤと眠っているAを見ると、少し肌寒いのか体を丸めている。


俺は少し呆れたように笑い、隣の寝室に足を運ぶ。

ベッドの上から毛布を引きずり出し、上に掛けてやる。


「はぁ、これじゃあAの親じゃんか」


苦笑しつつも、Aの頭を撫でてやると無意識に顔を綻ばせていた。


それから、俺は明日までに終わらせなければならない仕事を片付けていった。

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作者名: x他1人 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2019年9月8日 19時

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