検索窓
今日:17 hit、昨日:1 hit、合計:17,645 hit

無意識に任せて ページ7

【A視点】

「そのときのこと、思い出して、怖かったんじゃないですか?」

私が聞きたかったことを口にすると、アランはしばらくの間、何も言えずに固まっていた。

「怖い……か。……そうだな、ああ」

アランのまぶたが、微かに震えているように見えた。珍しくアランが弱っている。

「場所を変えましょうか。アラン、今日は夕食まで一緒にいても、いいですか?」

アランは小さな声で承諾した。一緒にアランの部屋に向かう。


「お前の思っている通りだよ」

部屋に着いた途端、アランは自嘲するように言った。

「怖かったんだ。もう一度あの痛みを経験することが……」

私はその痛みを知らない。アランがそのときどれほど苦しんだかわからない。だけど、一瞬にして肩を庇うほど、本能が危機と認識するほどのものだったことは察した。

「アラン……!」

自分でも気づかないうちに、私はアランの胸に飛び込んでいた。

「A……?」

困惑するアランを置いて、強く抱き締める。

「私はあなたの抱えている恐怖を体験していないから、無責任なことは言えない。でも、信じてほしい。今は私がいる。私があなたを守ってみせる。たとえあなたが傷ついたとしても、私が癒してあげられるから……!」

言いたかったことを全部、無意識に任せて伝えた。顔を上げて、アランと視線を交わす。

「私がいるから、もう大丈夫です」

「……まったく、お前ってやつは」

少し弱った目をしばたたかせて、アランはしゃがみ、私と身長を合わせた。私の左の頬に彼の手が伸びる。

「ありがとう。大好きだ、A」

「あ……っ」

何日ぶりかに、彼と唇を合わせた。優しく触れるような口づけ。

「それはずるいですよ……」

「ごめんな。リーグが終わるまでは自重しようとしていたんだが、つい、な」

私の反応を楽しむように静かに笑うアラン。


「お前の懸念を晴らしてやろうと思ったのに、まさか俺が救われるとはな」

「救われてくれたのなら、よかったです」

私たちの間に笑顔が戻る。幸せな時間が流れていくのを感じる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

夕食の時間まで、私とアランはずっと一緒にいた。話が尽きることはなかった。

ツドキとリザードンの調子が完璧だという話、アランがここまでリザードン一体で勝ち上がっている話、サトシとショータの熱いバトルの話、準決勝はどうなるかの話……。どれもバトルの話。どれだけ私たちがバトルに心を奪われているかがわかる。

楽しみに→←懸念



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
設定タグ:ポケモンXY , アラン , 長編   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:頂志桜 | 作成日時:2019年7月31日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。