無意識に任せて ページ7
【A視点】
「そのときのこと、思い出して、怖かったんじゃないですか?」
私が聞きたかったことを口にすると、アランはしばらくの間、何も言えずに固まっていた。
「怖い……か。……そうだな、ああ」
アランのまぶたが、微かに震えているように見えた。珍しくアランが弱っている。
「場所を変えましょうか。アラン、今日は夕食まで一緒にいても、いいですか?」
アランは小さな声で承諾した。一緒にアランの部屋に向かう。
「お前の思っている通りだよ」
部屋に着いた途端、アランは自嘲するように言った。
「怖かったんだ。もう一度あの痛みを経験することが……」
私はその痛みを知らない。アランがそのときどれほど苦しんだかわからない。だけど、一瞬にして肩を庇うほど、本能が危機と認識するほどのものだったことは察した。
「アラン……!」
自分でも気づかないうちに、私はアランの胸に飛び込んでいた。
「A……?」
困惑するアランを置いて、強く抱き締める。
「私はあなたの抱えている恐怖を体験していないから、無責任なことは言えない。でも、信じてほしい。今は私がいる。私があなたを守ってみせる。たとえあなたが傷ついたとしても、私が癒してあげられるから……!」
言いたかったことを全部、無意識に任せて伝えた。顔を上げて、アランと視線を交わす。
「私がいるから、もう大丈夫です」
「……まったく、お前ってやつは」
少し弱った目をしばたたかせて、アランはしゃがみ、私と身長を合わせた。私の左の頬に彼の手が伸びる。
「ありがとう。大好きだ、A」
「あ……っ」
何日ぶりかに、彼と唇を合わせた。優しく触れるような口づけ。
「それはずるいですよ……」
「ごめんな。リーグが終わるまでは自重しようとしていたんだが、つい、な」
私の反応を楽しむように静かに笑うアラン。
「お前の懸念を晴らしてやろうと思ったのに、まさか俺が救われるとはな」
「救われてくれたのなら、よかったです」
私たちの間に笑顔が戻る。幸せな時間が流れていくのを感じる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夕食の時間まで、私とアランはずっと一緒にいた。話が尽きることはなかった。
ツドキとリザードンの調子が完璧だという話、アランがここまでリザードン一体で勝ち上がっている話、サトシとショータの熱いバトルの話、準決勝はどうなるかの話……。どれもバトルの話。どれだけ私たちがバトルに心を奪われているかがわかる。
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2019年7月31日 20時