嬉し泣き ページ29
部屋に戻ってきた私は、もう一度自分の日記帳を眺めていた。
椅子に腰掛け、じっくりと自分の文章と向き合う。
最後の日記は、私が家を飛び出るほんの少し前のものだった。そういえば、こんなことも書いていたなぁ……。感情に任せて、ペンを走らせていたっけ。
そこから何気なく、ぺらぺらとページを捲っていくと、最後のページにたどり着いた。
そこには、全く覚えのない、私のものではない文字があった。
「アラン……!」
少し癖のある、でも美しい字。そんな字が一面にびっしりと書かれていた。
『A。勝手にお前の日記に書き込むことを許してくれ。どうしても、こうやって伝えたいんだ
お前がこの日記を再び手にしたとき、様々な感情が渦巻くと思う。それがお前を苦しめることになるかもしれない。それでも俺は、お前にお前自身の過去を知ってほしかったんだ
教官も俺も、お前には幸せに過ごしてほしいと思っている。だからこそ、この日記帳を返してあげたかった
俺はお前がどんな過去を生きてこようが、どんな葛藤を抱えていようが、お前のすべてを愛している。そんな人生を歩んできたお前だから、俺は大切なものに気づかされ、『最強』の本当の意味を知ることができた。だから決勝戦まで登り詰めることができたんだ。本当に感謝しているよ
A。改めて、決勝戦進出おめでとう。正直、お前と戦うのは少し怖いよ。お前はいつも突飛で巧妙な発想を武器にしてくる。お前の出方はなかなか読めない
考えてみれば、俺、今までお前に負け続けているんだ。出会ったときから、ずっと。だが、今回で終わりにしてやる。お前に勝たせてやりたい気持ちもないわけではないが、俺はお前に勝ちたい。お互いすっきりとした気持ちで、全力で、正々堂々と戦って、勝敗をつけたい。お前もきっとそう思っているだろう?
いよいよ明日がリーグ最終日、俺とお前の決勝戦だ。長かったようで短かったな。いろいろ書き連ねたが、俺がお前に望むのはただひとつだ。明日のバトル、思い切り楽しんでほしい。すべてを出し切ってお前とぶつかり合いたい
明日を楽しみにしているぞ。俺にとって最強で最高で、最愛の人』
これがアランの伝えてくれたものだった。
最後の文に目を通した瞬間、私の手が震えだした。
「あれ……」
思わず笑ってしまった。頬に何かが伝う感覚がした。
そっか、私、今、泣いているんだ。嬉し泣き、か。
――ありがとう……アラン!
こんなに私を愛してくれて、ありがとう……!
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2019年7月31日 20時