何の縁か ページ25
【アラン視点】
「いろいろとありがとうございました。カレー、いつも通り美味しかったです」
「こちらこそ、ありがとう。決勝戦前に付き合わせちゃってごめんね。リーグが終わったら……できれば、Aと一緒にまた来てね」
教官は少し自信なさげにそう言った。Aがいつ帰ってくるつもりなのか教官もわからないのだろう。俺の返事も曖昧になってしまった。
「では、俺はこれで……」
「いた! おぉーい! アラン!!」
……あぁ、嫌な予感がする。
振り向くと、汗だくのまま俺をめがけて走る親父の姿があった。
「親父……」
「Aちゃんから聞いてね。ここにいるんじゃないかって。それにしても、久しぶりだねぇ。元気そうで何よりだよ」
何の縁か、俺が教官と一緒にいる間、Aもまた親父と一緒にいた、ということだろうか。正直そう考えると不思議と感心してしまうが、このダメ親父がAを困らせるようなことをしなかったかどうか、それが不安だ。
「アランくんの、お父様……?」
俺たちのやり取りを見ていた教官が、興味深そうに互いを見比べる。
「ええ。それで、あなたはアランとどのような関係で……?」
何も知らない親父は、訝しげに教官を見つめる。その様子を見た教官は、面白そうにくすりと笑って答えた。
「私は息子さんの教官、そして、Aの母親として息子さんと接していただけですので、ご安心ください」
親父は面白いほどに絶句していた。まあ、気持ちはわかる。この人は、母親という年齢には見えないほどの容姿をしている。それに加え、この人の立ち位置は奇妙なのだ。理解が追い付かないのも無理はない。
「え……えっと……?」
「教官、少し時間がいるようです」
教官は目に見えて面白がっていた。
「ええ、そうでしょうね。お父様、少しお時間いただけますか? 私、お父様とゆっくり語りたいことがあるんです」
その言葉を聞いたとき、俺は瞬時にこの人が何を語りたいのか理解できた。カレンデュラ……教官の旧友、俺のお袋についてだ。
「あ、ええ。大丈夫ですけれど……」
親父は教官が自分の亡き妻の旧友だとは知らない。Aと初めて顔を合わせたときのように勘付いているかもしれないが、確信には至っていないだろう。
「アランくん、そういうわけだから、少しお父様借りるわね。君はこれからトレーニングに行くんでしょ? 頑張っておいで」
教官はうまいことまとめて、親父を家に誘い込んだ。さて、どうなることやら。
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2019年7月31日 20時