トレーニング ページ24
私はアカザさんを連れて、選手村のトレーニング施設に向かおうとした。私としても、誰かに見られながらトレーニングするのは、意識が高まっていいと思っている。それが対戦相手の、そして想い人の父親だというのだから、なおさらだ。
「こっちです、アカザさん!」
「あぁ、ちょっと待ってくれない? 靴紐結びたくて……」
おっと、それは待たなければ。私のテンションが上がってしまって、アカザさんを急がしてしまっては申し訳ない。
アカザさんを待っている間、私は周辺の様子を何気なく見ていた。
「あれって……」
そうして遠くに見つけたのは、サトシとセレナさん、シトロンくんにユリーカちゃん。彼らの視線の先には、ティエルノ、トロバ、サナと呼ばれている女の子、そして、マノンちゃんがいた。
マノンちゃんがサトシたちと一緒にいるなんて、意外と世間って狭いんだなぁ。
私も少し声をかけていこうかと思ったが、ちょうどアカザさんの準備が整ったようだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ツドキ、エアスラッシュ!!」
「キッス!!」
トレーニング用の的に、エアスラッシュを命中させ、切り刻んだような痕をつける。
「わぁ……さすがは決勝戦まで勝ち上がってきたAちゃんだね。テレビで見ているよりも、迫力がすごいよ」
後ろから見守ってくれているアカザさんが技を披露する度に褒めてくれるから、照れくさいけど自信がつく。
「アラン……息子さんもすごいですよ。私も分析しようとしましたが、彼のことなので、明日の決勝戦、どうなるかわかりません」
「アランか……どこにいるんだろうな」
アカザさんの言葉で気がついた。そういえば今日、アランと会っていない。てっきりアランもトレーニングに来ているのかと思ったけれど、そうではないらしい。彼のことだから、どこかで特訓していると思うけれど。あっ。
「うん。ちょっとアランを探してみるよ。Aちゃん、トレーニング見せてくれてありがとう。邪魔したね」
アカザさんは何の手がかりもなく、アランを探しに行こうとしている。
「あのっ、アカザさん!」
その後ろ姿に呼び掛けた。
「もしかしたら……プラターヌ博士の研究所、その辺りにいるかもしれません」
「わかった。ありがとう!」
満面の笑みのアカザさんを見送る。私も一緒に行ってもよかったのだが、もしものことを考えてやめておいた。
アランは、私のお母さんの特訓を受けているのかもしれない。そう思ったんだ。
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2019年7月31日 20時