想い人の親 ページ23
「私とバトルしてくれてありがとう、アランくん。お礼にといったら何だけど、お昼をご馳走するわ」
教官の言葉で気がついた。そういえばもう昼なのか。ということは、かなり長い間教官と戦っていたんだな……。
俺と教官はリビングに戻り、俺は席に着いて、教官が昼食の支度をするところを眺めていた。
「Aとアランくんが決勝で戦うとはね。願ったり叶ったりの展開だわ」
「自分の娘の対戦相手にこんなに良くするなんて、教官も変わっていますね」
俺が冗談めかして言うと、教官はそれに乗ってきた。
「自分の娘の想い人をもてなすのは、当然のことじゃない？」
「……調子いいですね、教官」
話術でさえ、教官に負けてしまう。
「それに、Aもアランくんも、私の教え子ってことに変わりはないから。自分の娘をひいきするつもりはないわ。どちらも平等に応援しているのよ」
ここが教官の凄いところだと思う。自分の娘だからって、特別扱いしない。子供扱いせずに、一人の人間として、あいつを見ている。簡単なようで、なかなかできないことだ。
「はい。お待ちどおさま」
食卓に置かれたのは、カレーライス。
「さすが、わかってますね」
芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。バトルで少し疲れた体が求めているものが、ここにある。
「いただきます」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【A視点】
「……と、ざっとこんなもんですかね」
アカザさんを連れて、私はミアレの街をぐるっと巡った。途中、アカザさんがプリズムタワーを見てテンションが上がったのか、プリズムタワーの周りを100周すると言い出したのもあって、結構いい時間になってしまった。
結局アカザさんは5周、私は50周で切り上げた。
「Aちゃん……あ、ありがとう……はぁ……」
アカザさんはいまだに息を切らしている。
「はしゃぎすぎたんですよ、アカザさん」
「ごめんねぇ……。というか、Aちゃんの体力って、すごいんだねぇ……」
「伊達にポケモンマスター目指してませんからね。体力は自信ありますよ」
アカザさんは私の言葉に苦笑した。
「まあ、まだお昼ですし、これからは休憩も挟みつつ、ゆっくりミアレ観光を楽しんでもらえればいいんじゃないかと。あいにく、私はこれから明日に向けてトレーニングしようと思っているので……」
「トレーニング……」
アカザさんの目がきらっと輝いた。ってことは……。
「見学しますか？」
「Aちゃんがよければ……！」
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作者名：頂志桜 | 作成日時：2019年7月31日 20時
