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3話 ページ3

「あらあら、災難やったねぇAちゃん。ほらそっちの男の子もはよ上がりんさいな」
「叔母さんただいま!とりあえずお風呂場使うな」
「お邪魔します、えっと俺は……」
「君もこっち!」

先程知ったことだが、俺は考えなしに出てきたせいで雨具を忘れるなどという初歩的なミスを犯していた。貸すと言って差し出された傘も当初は断ったのだが、心意気虚しくお客さんに風邪を引かせる訳にはいかないという少女の言葉に圧しきられてしまった。結果として彼女を雨に濡らしながら自分は傘の下で走るという何とも面目の立たない真似を経て彼女の家へと辿り着いたのである。

流石に腕や顔はかなり濡れていた。傘を差していたとはいえど降雨の中を疾走すればそれも当然のことだ。渡された柔らかいタオルからはふわり、何かは不明だが柑橘系の爽やかな香りが漂っていた。そんな俺の気持ちを察したのか、オレンジとシトラスのやつやよ、と応える彼女はぶんぶんとかぶりを振っている。きっとその方が乾かしやすいのだろう。だがその様子がまるで風呂上がりの犬猫のようで、少し頬が緩んだ。

「お風呂、先入りはる?」
「俺よりも貴女の方が……女性が身体を冷やすのも良くないでしょうし」
「親切やね……あっ、そうそう!君の名前、訊いていい?」
「……すみません、名乗り遅れました。基山タツヤです」
「私はA。敬語なしでええよ?」
「じゃあ失礼して……。数日間よろしくね、Aちゃん」

そういえば、先程も家の人が彼女のことをAちゃんと呼んでいたっけか。お世話になるというのに名乗りもせずに名前も聞いていなかったとは何たる失態だろう。幸い彼女が気分を害した雰囲気は無いのだが、一通り拭き終えれば家の人にもちゃんと挨拶をしなければ。ぶっちゃけ彼女からの俺についての説明と言えば、駅で拾ったというだけだったのだ。流石に人様のお宅に転がり込んでおいてその説明のままでは失礼が過ぎる。と、いうより自分の気が引けるだけである。

「それじゃ、私さっと浴びてくるわ。居間の方行ったら叔母さんおるやろうからそっち行っときーね」
「ああ、わかった。いっぱい暖まってね」
「心配しぃやなぁ、タツヤくん」
「あんなにびしょ濡れになってたら誰だって心配するよ」

ありがとーな、そう呟いて彼女はお風呂場へと姿を隠す。ここに居座るのも体制上色々と良くないだろう。言われたように居間へ向かえば、先程の人が丁度夕餉の準備を進めているところだった。

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(プロフ) - 描きピーさん» 描きピーちゃんコメントありがとう〜!私にとっての「夏」という世界観を最大限綴れるように頑張ります……! (2019年8月25日 22時) (レス) id: 0a5e6cfb08 (このIDを非表示/違反報告)
描きピー(プロフ) - 漣ちゃん、新作おめでとうございます!漣ちゃんの執筆する「夏」をテーマにした物語は、綺麗な言葉と表現が巧みに使われていて読者の気持ちを涼ませてくれる所が凄く好きです!これからも応援しております! (2019年8月25日 21時) (レス) id: fe17964061 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年8月25日 20時

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