4話 ページ4
がらりと居間の扉が開かれる。その隙間から頭にタオルを被った彼女が顔を覗かせ、夕餉の用意の手伝いをしている俺を見るなり少しだけ目を見開かせた。何故お客さんが手伝っているのか、とでも言いたげに。
「そんなんせんでええんよ？」
「流石に良くしてもらってるのに何もしないのも申し訳なくて……それに、俺が手伝いたいだけだからね」
「そんなら止めやんけどなー。叔母さーん、お風呂上がったよー！」
そう長くない髪を片手で少々煩雑に拭きながら、彼女は器用にももう片方の手で食卓のグラスにお茶を注いでいく。溢しやしないかと見ているこっちがひやひやさせられるのだが、そんなことは気にも留めていないようだった。きっとそれが彼女の良いところなのだろう。
彼女がお風呂に入っている間、俺は叔母さんとの会話によって少しだけ彼女に詳しくなった。まず、彼女は今中学三年生であるということ。つまりは俺の一つ上だという訳だ、いやだから何だということもないのだが。
そして出迎えてくれた女性と彼女との関係は叔母と姪だということ。特に良い呼び名も見付からなかったのでとりあえず俺も叔母さんと呼ばせてもらうことにした。
彼女はつい最近、遠いところに住んでいた祖父を亡くしたばかりだということ。その遺品整理だとか様々なごたごたを片付ける為に両親は留守にしており、女子中学生を一人家に放置する訳にもいかないため叔母さんが彼女の世話に来ているのだということ。そんな身の上話をつらつらと聞いていたのだ。
「雨、薄明時には上がるっぽいで」
「それなら明日はその辺でも歩き回ろうかな」「それがええよ！なんやったら私案内すんで？」
「大丈夫だよ、Aちゃんの手をそう煩わせるのもね」
「ここ道入り組んどって多分タツヤくん迷うで」
「……もしかしたら案内をお願いするかもしれない」
「ふふ、まっかしとき」
煮物の皿を運んでいたお盆を机に置き、ぴん、と胸を張った彼女はその胸に自身の手をおいて誇らしげな顔をする。俗に言うどや顔である。そんな子供のような一面が可愛らしくて、それがお日さま園の幼子を見るときと同じ気分だと気付いた俺は耐えきれずに笑いを溢した。Aちゃんが一個年上だなんて思えない、勿論のこと良い意味で。
「Aちゃん、三年生なんだっけ？」
「んー？そやよ、今受験生やけ」
「俺の先輩だったんだね」
「せやで、ほんまは敬うべきなんやからなー！さ、食べよか」
「じゃあ叔母さん呼んでくるよ」
「はーい」
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漣(プロフ) - 描きピーさん» 描きピーちゃんコメントありがとう〜！私にとっての「夏」という世界観を最大限綴れるように頑張ります……！ (2019年8月25日 22時) (
レス) id: 0a5e6cfb08 (このIDを非表示/違反報告)
描きピー(プロフ) - 漣ちゃん、新作おめでとうございます!漣ちゃんの執筆する「夏」をテーマにした物語は、綺麗な言葉と表現が巧みに使われていて読者の気持ちを涼ませてくれる所が凄く好きです!これからも応援しております! (2019年8月25日 21時) (レス) id: fe17964061 (このIDを非表示/違反報告)
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