44話 ページ44
「佐久間あああ!!」
不動を無理矢理振り切った鬼道が再び止めようとボールの正面に立つ。そして蹴り返そうと足を上げたそのとき
「ぐっ…うああっ!!」
鬼道よりも先に、染岡が止めに入ったのだ。負傷した方の右足で。痛い、辛い、苦しいの三拍子が揃っているはずなのに、気迫で染岡は皇帝ペンギン1号を弾き返した。
『染岡君…!』
「お前…!」
「残しといて…良かっただろ…」
そう言って気を失った染岡。「もう一度だ佐久間あ!!」しかしボールは生きていた。一之瀬と不動の競り合い。勝ったのは不動で、ボールを再び佐久間に送ってしまった。
「…ぁ……が…」
しかし佐久間はそれを受け取らない、いや、受け取れなかった。先程打った後の体勢からほとんど変わっていない。額に汗の玉をびっしりと浮かび上がらせ目を見開いていたが、次の瞬間、
「さく、ま…」
鬼道が掠れた声でこぼした直後、ホイッスルが鳴り響く。1-1、引き分けだった。負けたわけではないのに気分が悪い。雷門には右足を負傷しそれを酷使して気絶した染岡。真・帝国には
倒れた佐久間を仰向けにして何度も呼びかける源田。佐久間の返事はない。仲間があんな状態になるまで酷使されたのだ、許せるはずがない。鬼道は声を荒らげて影山の名を叫んだ。
『監督、救護は…』
「もう要請したわ」
今必要なのは水城の言う救護だ。これだけ重傷の選手がいるうえに、これを
『塔子ちゃん!手!』
「ごめんありがとう一青!」
「全員脱出しろ!!」と拡声器を使いヘリコプターから叫ぶのは鬼瓦。水城は塔子と手を繋ぎ、船体のそばに浮かばせた救命ボートに乗り込んだ。爆発で揺れる海面のせいで足場が不安定だ。他のボートには真・帝国学園の選手もいたが不動の姿はなかった。
『…キャプテン、鬼道君は?』
「それが…」
円堂が言おうとしたそのとき、潜水艦が今までで一番大きな音を立てて爆発する。鉄の塊と成り果てたそれは、そのまま暗い海に沈んでいった。
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作者名:不二市 | 作成日時:2017年9月20日 9時