所有物には名前を書いて second (ページ10)

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第五十章ページ10

一松side

……イライラする。

そっとラテアート練習用のカップから目を離し、客の座るテーブルを見る。

――仲良さげに話すAと、身長高めの男。

俺達は6つ子だから、どうしても身長は高い方ではない。

生まれたときが小さかったから。

……Aは高いやつの方が、好きなのかな。

芝「いっくーん。」

一「……だからその呼び方止めろって。」

芝「あんまり荒れてると、ラテアートに影響出ちゃうよ？

ほらもう、零れたー。」

一「チッ……。」

目線を戻すと、カップが傾いて中身が零れてしまっていて。

カップを持ち上げ、台を拭く。

……このままカップ砕いても、罰は当たらないよな。

力を込めるとカタカタとカップがいいだし、芝が慌てたように「ストップ、ストップ！」と俺を制した。

芝「荒れ過ぎにもほどがあるでしょ！？

カップ割ったら弁償だよ！俺と共同で！！

そんなの嫌だからな！？」

一「……ごめん。」

自分を落ち着かせるため、息を全て吐ききる。

芝「……いっくんがそんなに荒れるなんて。

あぁ、店長のこと？」

ぴくんっ、と耳が反応する。

一「……何か知ってるの。」

芝「いや、俺はそんな知らないけど。」

一「……。」

俺は口を噤む。

つくづく頼りにならないやつだ。

芝「……潰しにかかりたいでしょ。今すぐにでも。」

一「……は？」

芝「だーかーらー。」

うーん、と芝は背伸びをしてそれから腕を組むと、向こうを見やって。

芝「あいつ、一緒に潰しましょ？

……って話ですよ。」

物凄く嫌な顔。

……でも多分俺も同類だ。

一「……ヒヒッ、さいっこう……。

……乗った。」

最低、と言われてもいい。

離したくなんか、なかったんだ。

どうしても。