第六十八章 ページ30
真剣で、濁りなんてない彼の瞳に小さく私が映る。
一「……結婚して、欲しいんだけど。」
待ち望んでいた言葉。
きゅう、と心臓が疼いて。
いつも大事なところを逃げてばかりで、結局伝えずじまいの彼だから尚更。
破壊力がありすぎて、自分が招いたことなのに思考回路が追い付かない。
それでも、私はそれに応えなければならない。
『……っ、嬉しい。』
嗚咽が混じった。
込み上げてきたものが、ゆっくりと頬を伝っていくのが分かった。
一「……ぶっさ。」
『いっくんが泣かせるのが悪いんだもん……。』
ちょっぴり馬鹿にしたような、しかしどこかしら温かみのある彼の笑顔。
嗚呼、いいのかな。
人生分の幸せ、ここで使っちゃったかもな。
……まぁ、いっか。
もそもそと彼の方により、抱き着く。
彼は私を片腕で抱え込み、頭を撫でてくれる。
程よい人の温みが心地よい。
一「……俺に飽きて逃げないでよ？
……まぁ、逃がすつもりもないけど。」
『……安心して、私は逃げないから。』
一「どうだかね……？
A、無意識に男誑かしてるから。」
『人聞き悪いでしょ！』
一「……俺にはそうとしか見えないから。
…………俺、意外と浮気相手だったりとか？」
茶化すように言ってくるから、「だったら？」と言ってみる。
一「は？……その時はこっちが浮気相手だろうが向こうを潰す。」
怪訝に眉をひそめて言う彼に、私はくすりと笑って、
『……言われなくても貴方だけだから。
いっくん。』
一「……あっそう。」
顔を見上げると、いつものように視線を外されて、髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
全松girl(プロフ) - 黒兎さん» いえいえ^^これからも、頑張ってください！ (2017年3月26日 18時) (
レス) id: ee29ea7491 (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - 全松girlさん» 置いた後です！ありがとうございます〜 (2017年3月26日 14時) (レス) id: ae3fbfbaa1 (このIDを非表示/違反報告)
全松girl(プロフ) - 第七十二章の、「携帯を老いた」ではなく、「携帯を置いた」じゃないでしょうか？失礼でしたら、ごめんなさい。 (2017年3月26日 13時) (レス) id: ee29ea7491 (このIDを非表示/違反報告)
黒兎(プロフ) - 夜久夜恵･聡恵…執事か兄貴…低浮上?ゴメンなさいさん» そうか……、糖度甘めにした覚えはないんだが…… (2017年2月27日 21時) (レス) id: 2172f3f018 (このIDを非表示/違反報告)
夜久夜恵･聡恵…執事か兄貴…低浮上?ゴメンなさい(プロフ) - 黒兎さん» …てか、番外編あんまぁい！！！！((鼻血 (2017年2月15日 15時) (レス) id: c3e219345d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時：2017年1月15日 18時
