さよならを伝えたくなくて【夏休みSpecialストーリー】 ページ22
「……俺より先に死なないでね」
紫色のパーカーの彼は、猫のように目を伏せた。
その前には、既に冷たくなった白い子猫が横たわっていた。
その身体は、少し土がついて汚れている。
「こいつらみたいに、急に姿消して。
次に会ったときには死んでるとか、……残酷なやり方だけは絶対にしないで」
窺うように、彼の顔を覗き込んだ。
声は震えていて、何かを堪えるように唇は固く結ばれていた。
それも無理だったのだろう、はくっ、と息を吐きだすと、それと同時に一筋の涙が頬を伝い、アスファルトに灰色の染みを作った。
私はどうしたらいいか分からず、彼の背中をとんとんと優しく叩く。
すすり泣きは、次第に嗚咽に変わっていた。
一松が当時一番好きだった猫が、死んだ日だった。
「ねぇ」
「うん？」
一松が、私の髪をするりと撫でる。
「猫は死ぬとき姿を消すんだって」
「急にどうしたの」
「ネットに書いてあった」
庭の風鈴が、ちりんちりんと優しい音を立てた。
「……飼い主に姿を見られたくないんだってさ。
まぁ、俺飼い主とかじゃなかったけど」
お盆の季節だからか、あの子のことを思い出したような表情。
少し寂し気に、顔色を曇らせる。
「うぅん、一松は十分すぎることしてくれたよ。
あの子もきっと喜んでる」
「……だといいんだけどね」
外に向けた視線。
十四松くんが植えに来てくれたひまわりの花たちが、大きな花をつけていた。
「死に際くらい、……見せて欲しかった……、なんて言ってもしょうがないけど」
譫言のように掠れた声を出した一松の言葉に、私は黙っていた。
「…………あんたは、急に居なくなったりしないよね」
不安に駆られた様に。
髪を撫でる手が止まる。
「一人で生きていくのは、……俺には無理なんだ。
寂しくて、辛くて、……何しでかすか分からない。
……皆結局消えてっちゃうのは分かってる、分かってるけど！
…………一人はヤダよ……」
潤んだ瞳、懇願するような顔は、まるで小さな子供のようで。
彼のほうに向きなおった私は、柔らかな焦げ茶色の一松の髪を、優しく撫でた。
「……大丈夫、大丈夫だよ。
私はずっと一松の側に居るよ。
一人になんてしないから」
「大丈夫」と言いながら、ふるふると震える彼を抱きしめる。
彼が落ち着いたら、ひまわりの花をあの子のお墓に一松と添えに行こう。
そう思いながら、そっと目を伏せた。
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うさ耳(プロフ) - 蒼紫@UMEDIAさん» 分かった！！了解！一人のファンとして楽しみに見るね！！o(^_^)o (2017年7月10日 19時) (
レス) id: 2c24c813af (このIDを非表示/違反報告)
蒼紫@UMEDIA(プロフ) - うさ耳さん» ありがと！！！新作も多分これくらい長くなるかな←既に出来上がってるから、見てくれると嬉しい！！ (2017年7月10日 16時) (レス) id: 2172f3f018 (このIDを非表示/違反報告)
うさ耳(プロフ) - 黒兎ちゃん、最終回とても感動したよ！！泣 今までこの作品を遅れず書いてくれてありがとう。あと、お疲れ様！！これからも新作と今書いてる小説の更新待ってます！そして、いい小説家になる事を応援してます！！(｀_´)ゞ (2017年7月10日 15時) (レス) id: 2c24c813af (このIDを非表示/違反報告)
紅千琴【Mako】(プロフ) - 蒼紫@UMEDIAさん» ホントですか！？全力待機させていただきます！！！ (2017年7月4日 18時) (レス) id: 032b07eba7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼紫@UMEDIA(プロフ) - 紅千琴【Mako】さん» ありがとうございます！完結した後、しばらく放心状態でww紅千琴さんのコメントが届きましたで我に返りましたwwはい、次回作を今日出すのでそちらも見てくださったら嬉しいです〜 (2017年7月4日 16時) (レス) id: 2172f3f018 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒兎 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/satisfy15/
作成日時：2017年5月7日 22時
