【刀剣乱舞】人形少女の微笑むとき2 (ページ11)

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37、今年もよろしくなページ11

除夜の鐘が百八つなったころ、長谷部がやりきった顔をして戻って来た。そして、普段はそこまで酔った姿を見せない者たちまでもが、すっかり酔いつぶれているのを見て、驚いていた。

「な、なにがあったんだ…？！」

「…わたしが、たんとうのみんなのところに行ったのがいやだったみたい……」

Aがしょんぼりしながら長谷部にそう言えば、三日月のいつもの様子を見知っている長谷部は、ああ、と納得したようだった。

「三日月の旦那は、ちっとAを構いすぎだと思うんだよなぁ…んで、ちょっと離れられただけで、ああなるっていうのはな…」

「確かにな。いつもは優雅に酒を飲んで、顔色1つ変わることが無いのに、ああも酔うなんて…」

まったく…と長谷部が頭を押さえれば、Aが困ったような顔をして長谷部を見上げていた。

「…わたしのせい……」

「い、いや、気にしなくていい。あれは三日月が悪いだろう」

長谷部は慌ててAを慰める。普段はまだ幼いこの少女の代わりに審神者の仕事をしているため、あまり接点がないのだが、たまにお茶を運んでくれたり、隣にそっと座って話したりすることもあり、長谷部の中でも、他の刀剣と同じく、Aは1番に守るべきものとなっていた。

「……でも」

「きにすんな。それよりも、長谷部の旦那が帰って来たってことは、除夜の鐘を鳴らし終わったってことだよな。んじゃ、明けましておめでとうございます。今年もよろしくな」

まだ言いつのろうとするAを薬研は宥め、新年のあいさつをする。
Aも、仕方なく素直に挨拶を返す。

「あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

ちゃんと新年の挨拶は乱から習っていた。お辞儀までつけて挨拶をすれば、薬研は満足そうに頷く。

「はせべも、よろしくお願いします」

「あ、ああ…明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

そのまましばらく縁側でぼんやりとしていると、いつかと同じようにAがこっくり、こっくりと舟を漕ぎ始めた。それも仕方がない。いつもはすでに布団の中で熟睡している時間だ。薬研は、Aに声を掛ける。

「眠いのか？」

「……ぅ…ん…」

ほとんど寝ているような声音でAが答えるのを聞き、お猪口を置いて立ち上がる。