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クチナワ ページ8

気候というものは忙しなく変わる。
今朝は晴れていたのに、いつの間にか曇天が空を覆い、小雨が降り注いでいる。

嫌な天気だ。
こうも天気がぱっとしないと心も晴れない。


「まさか石田方が先にお市様を見つけてしまうとは」


薄暗い一室で残念そうに天海が呟く。
その隣には織田軍の頭として勝家が同席していた。


「大丈夫。お市殿は必ずわしが取り返そう」


二人を前にして家康はお得意の笑みを浮かべる。
人によっては安心感を与える朗らかな笑みだが、またある人によっては猫を被っているだけのようにも見える。勝家は後者だった。


「……一体何を根拠に“大丈夫”と言える」

「三成の戦力を削げば向こうだって戦意喪失するはずだ。そうすれば自ずと降伏して__」


戦力を削ぐ?自ずと降伏して?
そこに至るまでどれだけの時間を有すると思っているんだ、と抗議したくなったがぐっと堪えた。


「徳川氏、石田氏に対して交渉を持ちかけてみてはどうだろうか?」

「三成に交渉を?勝家、お前がお市殿を心配しているのは分かるが……」

「先送りにするつもりなら私は単独で兵を挙げる」

「落ち着きなさい勝家」


隣の天海が穏やかな声で宥める。

家康には勝家の焦りが痛いほど分かった。
大切な人が敵方に囚われている。
こちらの出方次第では酷い目に合うかもしれない。
早く助けなければと焦る。
しかし焦ったところで何も出来やしない。
だから時間をかけて準備をして、その時が来るのを待つしかない。


「勝家、お前の気持ちはわしにもよく分かる。だが敵対している三成が交渉に応じるとは思えない」

「打ってつけの者を知っている」


何とか説得を試みるが、勝家の強い眼差しに圧倒される。


「……それは誰だ?」

「Aだ」

「は?」


姉の名が挙がったことに動揺し、家康は思わず聞き返す。


「誰だって?」

「徳川氏、今一度Aに機会を与えてくれないか」

深淵をのぞく時→←急がば回れ



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設定タグ:戦国BASARA , 石田三成 , 三楓
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三楓(プロフ) - 鈴さん» なんと!まさか私の作品がきっかけでBASARAを始めて下さるとは...とても嬉しいです!皇は操作できるキャラが多いので色んなキャラやストーリーに触れることが出来ると思います。是非是非やり込んでみてください!またこの度は完結まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年3月11日 3時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - …読んでいて ドキドキしたり、ハラハラしたり色々な気持ちになれて楽しかったです!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてありがとうございます!!とても面白く 更新が楽しみでした!三楓さんの三成さまが大好き(もちろん 他のキャラクターも大好き)です。また、三楓さんの作品がきっかけでBASARAを(皇から)始めました!上手くまとめられないのですが… (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメありがとうございます!お陰様で今回も無事完結することが出来ましたヽ(*´∀`)ノキャラは基本原作に近い形でと思いながら書いているのでキャラ崩壊が不安ではありましたが、そのように言っていただきとても嬉しいです!次作も時間が許せば是非書きたいと思います! (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 天智就佐さん» こちらこそ物語を最後まで見届けていただきありがとうございます!賞賛いただき私は涙腺が崩壊しました(´TωT`) (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:三楓 | 作成日時:2020年1月1日 2時

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