何も無い ページ6
春霖から送られた文には『徳川の内情についてここに記す代わりにこちらの私情に力を貸してほしい』という内容が書かれていた。
その私情というのが、お市のこと。
徳川はお市を探しているため、彼らよりも先に見つけて保護してほしいというものだった。
「本当に徳川は魔王の妹を探しておるのか?」
大坂城に戻ってきた吉継が訝しげに尋ねる。
「家康の背後には織田がいる。私は家康の領地で柴田勝家と遭遇した」
「ふむ、またもや織田が関与しているのか……。しかしこの春霖という人物は一体何者だ?」
「知らん。Aの傍にいたから奴の側近か何かだろう」
肩を借りたことは覚えているが、覆面のせいで素顔は分からなかった。
謹慎中のAの代わりに動いているのか、はたまた独断で徳川を見限ろうとしているのか。
どちらにしろ、家康と敵対する三成にとっては好都合な存在だ。
「……Aと言えば、今頃一人で己の愚かさを嘆いているだろうな」
ふと三成は、謹慎を受けて孤独に許しを乞うAを想像した。
「私や左近を助けたばかりに家康に疑われ処罰された。この上ない馬鹿だと思わないか?」
頬杖を付いて鼻を鳴らす。
「うむ、しかし流石の徳川も姉の首は刎ねたくなかったようだ。姉を戦場に出しておきながら姉の死は望まぬなどと矛盾しておる」
「全くだ」
家康がAを殺すことなど恐らくないだろう。
悪運の強い女だと思った矢先、春霖からの書状に目を通しながら吉継が呟いた。
「だが次は間違いなく殺されるであろうな」
「次、だと?」
「
吉継の発言で身体が芯から凍りつく。
配下が敵国と繋がっていれば当然その主君も繋がっていると見なされ裁きを受ける。
この書状一つが確たる証拠となり、配下共々主君は責任を取って腹を斬らざるを得ない。
「例え命が助かったとしても、二度と日の目を見ることはなかろうよ」
押し寄せる胸騒ぎをせき止めようと身体に力が入る。
……私は、何を恐れている?
私とAにはっきりとした関係性は無いだろう。
作ろうとして、冗談だろうと笑い飛ばされて、それでも諦めが悪くて結局曖昧になった。
寧ろ何も無い方がよかった。
なんせ相手は家康の姉。
どう足掻いても家康に味方するのは必然的だ。
それなのに、奴が余計なことをしなければ……
こんなに苦しまずに済んだのに。
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三楓(プロフ) - 鈴さん» なんと!まさか私の作品がきっかけでBASARAを始めて下さるとは...とても嬉しいです!皇は操作できるキャラが多いので色んなキャラやストーリーに触れることが出来ると思います。是非是非やり込んでみてください!またこの度は完結まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年3月11日 3時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - …読んでいて ドキドキしたり、ハラハラしたり色々な気持ちになれて楽しかったです!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてありがとうございます!!とても面白く 更新が楽しみでした!三楓さんの三成さまが大好き(もちろん 他のキャラクターも大好き)です。また、三楓さんの作品がきっかけでBASARAを(皇から)始めました!上手くまとめられないのですが… (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメありがとうございます!お陰様で今回も無事完結することが出来ましたヽ(*´∀`)ノキャラは基本原作に近い形でと思いながら書いているのでキャラ崩壊が不安ではありましたが、そのように言っていただきとても嬉しいです!次作も時間が許せば是非書きたいと思います! (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 天智就佐さん» こちらこそ物語を最後まで見届けていただきありがとうございます!賞賛いただき私は涙腺が崩壊しました(´TωT`) (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2020年1月1日 2時