幻視 ページ31
『然り』
脳髄にまで響く声。
得体の知れない魔が徐々に這い寄ってくる。
『黒百合の根は深い。その顧みなさこそ一見の価値ぞある。……貴様や糸竹では手に余る』
絶命していた家康の瞳が赤く染まり、黒い液体を垂れ流しながら不敵に笑った。
「魔王ッ……!」
外見は家康でも中身が違う。
今度は背後にいたAの瞳も灼熱のように爛々と光った。
『者よ、世に
魔王は三成を惑わす。
自分が復活すればこんな未来を消し去ってやれるのだと甘言を吐く。
「自惚れるな。貴様に指図されるほど私は堕ちていないッ!」
『……であるか。朧に身を置く愚かしき者よ……!』
夏場の陽炎のように辺りが歪み、再び暗がりへと戻る。
ふと、どこからともなく現れた松明が仄かに三成の周りを照らした。
「……嫌なものを見た」
「三成さん?」
Aの声がして反射的に振り返る。
確かにそこにいたのはAだ。
しかし先程のように紛い者や幻かもしれない。
そう疑っているのはAも同じ。
「本物?……いや、三成さんがこんなところにいるはずが」
「貴様こそまた私を誑かしているのではあるまいな」
「またってことは、もしかして三成さんも変な夢を?」
「貴様もか?」
「私は自分が処刑される夢を見た。首を斬られたあと、私の偽物が現れて……追いかけようとしても首だけではどうにも出来なかった。だがついさっき親切な人が私の首と胴を繋げてくれたから今はほら、元通り」
「……遂に頭がイカれたか」
「言いたいことはよく分かる。でも事実なんだ。そういう三成さんはどんな夢を?」
「私は……」
過ぎるのはあの悪夢。
自らの復讐を終えた先の末路。
そして、新たな復讐の芽。
「まあとにかくここから脱出しなければならないことに変わりはない。もしかしたら私たち以外にも彷徨っている人がいるかもしれないし、その人たちも探しつつ出口を探そう」
沈黙している時間が無駄と思われたのか。
或いは何かを察してあえて話を切り上げたのか。
「……ああ、そうだな」
全て後ろ向きに考えてしまうのは
きっとこの深い闇のせいだと信じたい。
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三楓(プロフ) - 鈴さん» なんと!まさか私の作品がきっかけでBASARAを始めて下さるとは...とても嬉しいです!皇は操作できるキャラが多いので色んなキャラやストーリーに触れることが出来ると思います。是非是非やり込んでみてください!またこの度は完結まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年3月11日 3時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - …読んでいて ドキドキしたり、ハラハラしたり色々な気持ちになれて楽しかったです!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてありがとうございます!!とても面白く 更新が楽しみでした!三楓さんの三成さまが大好き(もちろん 他のキャラクターも大好き)です。また、三楓さんの作品がきっかけでBASARAを(皇から)始めました!上手くまとめられないのですが… (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメありがとうございます!お陰様で今回も無事完結することが出来ましたヽ(*´∀`)ノキャラは基本原作に近い形でと思いながら書いているのでキャラ崩壊が不安ではありましたが、そのように言っていただきとても嬉しいです!次作も時間が許せば是非書きたいと思います! (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 天智就佐さん» こちらこそ物語を最後まで見届けていただきありがとうございます!賞賛いただき私は涙腺が崩壊しました(´TωT`) (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2020年1月1日 2時