変わらないうちに ページ15
やがて陽が沈む。
太陽が消えた城下町は昼間とは違う雰囲気を漂わせていた。
大坂の屋敷にて春霖は三成たちに天海の野望と自分の正体を明かした。
春霖が竹中半兵衛であったことを知ると、三成はその場で頭を垂れ、吉継は唖然とし、左近は歓喜余って涙を流した。
更に秀吉のことについても直々に語られた。
しかし半兵衛の語り口調は打倒徳川を仄めかしている。
その姉がいることもお構い無しに。
いや、もはや同族として認知されているのか。
隣でAは耳が痛いのを我慢して話を聞いていた。
やがて、少し席を外す。
お市と勝家の様子を見に行こうと薄暗い廊下を歩んでいると、向かい側からぬっと勝家が現れた。
「勝家、丁度良かった」
「……」
勝家の様子に首を傾げる。
折角探し求めていたお市に会えていたというのに彼はいつにも増して暗い顔をしていた。
「お市さんはどうだ?」
「……相変わらずお美しい。私など眼中にないほどに」
酷にも全てを察して何も言えなくなる。
元々勝家は天海と共にいたのだ。
お市がそんな彼に対して警戒心を抱いていないはずがない。
だが、勝家のお市に対する気持ちは本物だ。
本物だからこそ、それが伝わらないのは辛く、もどかしいのだろう。
「勝家、お市さんは私から見ても綺麗な人だし、守りたくなる気持ちも分かる。だが、いつかは見切りをつけることも必要だと思う」
「……私に、お市様を諦めろと?」
勝家の顔が歪む。
他人から「諦めろ」なんて言われれば誰だって癪に障るだろう。
それでもAは言葉を続けた。
「だって、そんな顔してるお前を見てたらこっちまで辛くなるんだ」
「……何故お前が辛くなる?」
「お前とは色々あったけど、やっぱり友人だと思ってるからかな」
「……ではお前が友だと思っている男から一つ言わせてもらう。信長様の復活が阻止出来たとしても徳川氏と石田氏が対立していることに変わりはない。石田氏に伝えたいことがあるなら気が変わらぬうちに伝えておけ」
見透かされたような視線を向けられ、Aは苦笑いして惚けた。
「なんでそこで三成さんが出て来るんだ」
「……好いているのだろう?義弟に加担するのを躊躇うほど」
反論も出来ないほど図星で当てられる。
どれだけ心を偽ってもバレる時にはバレるらしい。
「……そうだな。気が変わらないうちに伝えるようにするよ」
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三楓(プロフ) - 鈴さん» なんと!まさか私の作品がきっかけでBASARAを始めて下さるとは...とても嬉しいです!皇は操作できるキャラが多いので色んなキャラやストーリーに触れることが出来ると思います。是非是非やり込んでみてください!またこの度は完結まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年3月11日 3時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - …読んでいて ドキドキしたり、ハラハラしたり色々な気持ちになれて楽しかったです!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてありがとうございます!!とても面白く 更新が楽しみでした!三楓さんの三成さまが大好き(もちろん 他のキャラクターも大好き)です。また、三楓さんの作品がきっかけでBASARAを(皇から)始めました!上手くまとめられないのですが… (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメありがとうございます!お陰様で今回も無事完結することが出来ましたヽ(*´∀`)ノキャラは基本原作に近い形でと思いながら書いているのでキャラ崩壊が不安ではありましたが、そのように言っていただきとても嬉しいです!次作も時間が許せば是非書きたいと思います! (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 天智就佐さん» こちらこそ物語を最後まで見届けていただきありがとうございます!賞賛いただき私は涙腺が崩壊しました(´TωT`) (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2020年1月1日 2時