揺動 ページ13
天海が階段を下り終わる前に立ち上がる。
咄嗟に受け身を取ったため頭は打ち付けていないが、四肢がズキズキと痛んだ。
「痛いのでしょう?無理せずとも良いのです。理性という枷さえ外せばすぐに楽になれますよ」
「理性のない人間などただの獣だ」
「ではただの人として死になさい」
「__おい」
天海の艶かしい声とは違う、思わず背筋を伸ばしてしまうような声が劈く。
すると天海の腹部から生理的嫌悪感を抱くような音と血濡れた
「……おや?」
自分の腹部から現れた鈍を物珍しそうに見下ろす。
彼の背後には笠を被ったもう一人の男が立っていた。
「貴様、私の女に何をしている」
男は笠の下からつり上がった翡翠色の瞳を覗かせている。刀が引き抜かれると、天海はその場で崩れ落ちた。
男はAが投げた短刀を拾い、手渡しするでもなく彼女の足元に投げ返した。
ほんの一瞬目が合うと深く笠を被り直し、「手こずらせるな」と吐き捨てる。
「なんで、ここに……」
「さっさと来い。向こうで刑部たちが待っている」
有無を言う暇も許されない。
それでもそのぶっきらぼうな言い方が閉じ込めていた恋心を再熱させる。
「(ああ、やっぱり私はこの人のことが__)」
小さなAはその感情に対して何も口出ししなかった。
足元に刺さった短刀を抜いて、すぐに彼の後を追った。
*******
Aたちが去った後、天海はひんやりとした土に伏したまま誰かの足音で目が覚めた。
「……これで決まりですね」
足音の主に呟く。返答は何も返ってこない。
ゆっくり起き上がると、動いた拍子に粘り気のある鮮血が赤い糸を引いた。
「徳川家康の姉は竹中半兵衛を匿い、更に石田方に寝返った。この事実があれば十分です。あとは貴方々に任せます」
「御意」
跪いたのは寺の住職。
そう、彼らは初めからグルだったのだ。
「楽しみですねぇ……あの東照の歪む顔が、目に、浮かびます……」
鈍い痛みを抱えながら恍惚気に目を細めた。
痛い。
痛い痛い。
ああ、でも……
私はまだ生きているッ……!
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三楓(プロフ) - 鈴さん» なんと!まさか私の作品がきっかけでBASARAを始めて下さるとは...とても嬉しいです!皇は操作できるキャラが多いので色んなキャラやストーリーに触れることが出来ると思います。是非是非やり込んでみてください!またこの度は完結まで閲覧頂きありがとうございました! (2020年3月11日 3時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - …読んでいて ドキドキしたり、ハラハラしたり色々な気持ちになれて楽しかったです!! (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
鈴(プロフ) - 完結おめでとうございます、そしてありがとうございます!!とても面白く 更新が楽しみでした!三楓さんの三成さまが大好き(もちろん 他のキャラクターも大好き)です。また、三楓さんの作品がきっかけでBASARAを(皇から)始めました!上手くまとめられないのですが… (2020年3月10日 23時) (レス) id: 2bf802d9a7 (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 紫月姫さん» コメありがとうございます!お陰様で今回も無事完結することが出来ましたヽ(*´∀`)ノキャラは基本原作に近い形でと思いながら書いているのでキャラ崩壊が不安ではありましたが、そのように言っていただきとても嬉しいです!次作も時間が許せば是非書きたいと思います! (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - 天智就佐さん» こちらこそ物語を最後まで見届けていただきありがとうございます!賞賛いただき私は涙腺が崩壊しました(´TωT`) (2020年3月10日 20時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2020年1月1日 2時