木箱 ページ26
Aが天守閣から戻って来たのは思いのほか早かった。
彼女が戻って来るなり、部屋の前を護衛していた兵は、「南蛮の商人より預かりました」と言って小さな木箱を渡した。
「商人はただの壺と言っていましたが…壺をお買いになるとは珍しゅうございますね」
A「あの者は壺と言ったのですか?」
Aは何が可笑しいのかくすくすと笑いだす。
護衛から木箱を受け取り、Aは赤い紐を解いて中を確認した。
護衛の二人は、その中に興味を示したのか箱の中を覗いてみると、入っていたのは小さい徳利のようなもの。
注ぎ口には蓋が付いていたので、恐らくこの中にも何か液体が入っていることが予想された。
「それは…酒か何かですか?」
先程Aと天守閣へ向かった方の護衛が問う。
A「いいえ、珍しい薬ですよ。以前、えいが腰が痛むと言っていたので取り寄せたのです。大変高価なものなので汝が盗まぬようただの壺と言ったのでしょう」
「なるほど」
二人は部屋を護衛していた兵の顔を見た。
強面で、海賊の頭領をしていそうな見た目なので商人が勘違いするのも無理はない。
「見た目で怖がられるのは慣れていますが姫様の品を盗むなど致しません」
A「冗談ですよ。それにしても…石田殿は遅いですね。いつもだったら既に来ているはずですが」
「女中たちも様子を見に行った限り、戻っていないようですね」
しーんと静まり返った屋敷はかえって不気味だった。
A「寒いでしょうから汝たちも部屋に入りなさい」
「いえ、お構いなく。我らはいつ姫様が脱走しても対応できるよう気を張っていなければなりません故」
きっぱりと断る強面の護衛に対して、Aと一緒に展望しに行った方の護衛は、完全に部屋で温まる気満々だったのか謙虚な言葉を紡ぐ暇が無かった。
「何を休もうとしている!任務中だと言うことを忘れるな」
「す、すみません」
A「そう気を張らずとも、今日は脱走する気などありませんよ」
去り際にその言葉を残し、Aは木箱を持ったまま部屋の中へと足を踏み入れた。
「姫様が脱走しないとは珍しい…。どこか体調でも悪くなされたのか?」
「単純に石田様が相手であるからこそ脱走のし甲斐があると思われているのではー?」
「…もしそうならば石田様は相当苦労なされるな」
護衛の二人はそんな会話をしながら共に笑いあった。
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わんこ大暴走 - 三楓さん» よろしくお願いします! (2017年11月27日 16時) (レス) id: 6622ba9bfd (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - わんこ大暴走さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)小説の方、是非拝見させて頂きますね。友達ですか!私でよければどうぞよろしくお願いします! (2017年11月26日 22時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
わんこ大暴走 - あと、よろしければ、お友達になっていただけませんか? (2017年11月26日 2時) (レス) id: 6622ba9bfd (このIDを非表示/違反報告)
わんこ大暴走 - わぁ!すごいです!ボクもBASARAの作品書いてます!読んでみてください! (2017年11月26日 2時) (レス) id: 6622ba9bfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2017年10月30日 12時