御届け物 ページ25
一方、客間の方で騒ぎがあっているとの報告を受け、女中たちが様子を見に行っている間、Aは広い座敷に一人でいた。
いつもならこれは好機と見て脱走するのだが、今日は何故か気分が乗らず。
障子の影に映る護衛の姿と、この間城下町で買った桜の髪飾りを交互に眺めていた。
三成『季節外れではありますが、桜は優美な女性という意味だと刑部が…』
A『汝は私が優美な女性だと?』
三成『…私はそう思います。A様にはこれが一番お似合いかと』
思い出される城下町での会話。
しかしAは複雑な表情をしていた。
原因は、城下町での会話とは別の記憶。
当時が何度目の春なのかは覚えていない。
唯一覚えているのは、その日が大阪城で行われた花見の日だったこと。
『今更!今更何を仰るのですか!』
ずっと、思い出したくない記憶。
思い出したくない言葉。
『____』
その言葉をかき消すように、桜の花びらが彼女の視界を遮った。
花びらの僅かな隙間から見えた背。
その背に自分は…なんと叫んだのだろう?
A「…」
髪飾りを箱に仕舞い、Aは部屋の障子を開いた。
すると、部屋の前に居た護衛達はすぐに彼女を部屋から出させまいと前を遮る。
A「天守閣に行くだけです。私が逃げ出すと不安なら、ついて来ても構いませんよ」
いつものように柔らかな口調で、Aは護衛達に同行の許可を与えた。
二人の護衛は互いに顔を見合わせ、一人はAと共に天守閣へ。
もう一人はAを訪ねる人が来るかもしれないので引き続き部屋の見張りをすることになった。
*******
Aが天守閣へ向かった後、入れ違いに南蛮の商人が姿を現す。
彼はぼんやりとした顔立ちであるものの、城下町で一躍有名になった南蛮の品を取り扱う店の店主である。
Aとも仲が良く、例の怪談話が好きな人だ。
「何やら向こうで揉め事があっているようなので、用事だけ済ませに来ました」
「生憎姫様は不在だ」
「あー…そうですか。ではどうかこれをA様にお渡しくださいませ」
そう言って南蛮の商人は、赤い紐で結ばれた小さな木箱を護衛の兵に差し出した。
「何だこれは?」
「ただの小さい壺にございます。A様に頼まれ南蛮から取り寄せました。取り扱いには十分ご注意を」
南蛮の商人はぼんやりとした顔を歪ませ、すぐにその場を去ってしまった。
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わんこ大暴走 - 三楓さん» よろしくお願いします! (2017年11月27日 16時) (レス) id: 6622ba9bfd (このIDを非表示/違反報告)
三楓(プロフ) - わんこ大暴走さん» コメントありがとうございます(*´∀`*)小説の方、是非拝見させて頂きますね。友達ですか!私でよければどうぞよろしくお願いします! (2017年11月26日 22時) (レス) id: ed4329dbeb (このIDを非表示/違反報告)
わんこ大暴走 - あと、よろしければ、お友達になっていただけませんか? (2017年11月26日 2時) (レス) id: 6622ba9bfd (このIDを非表示/違反報告)
わんこ大暴走 - わぁ!すごいです!ボクもBASARAの作品書いてます!読んでみてください! (2017年11月26日 2時) (レス) id: 6622ba9bfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三楓 | 作成日時:2017年10月30日 12時