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よく言われる〜と相変わらず軽い調子で飄々としている灰谷さんは、「それよりさ」と言って私の手の上にてのひらを重ね、ぐっと顔を近付けてきてからこう言った。
「灰谷さん、じゃなくて下の名前で呼んで」
「へ……?でも」
「呼んで、ね?」
ニッコリ笑って私の手をぎゅっと握ってくる彼のその顔の端麗さに、思わず頬が熱を持つ。彼に触れられている指先が震えるが、その挙動すら筒抜けなのがなんとも恥ずかしく、決まりが悪かった。
「わ、分かりました……じゃあ、蘭さん、で」
「んー……まあ今はそれでいいや」
何故若干不満そうなのか分からないが、取り敢えずは納得してくれたらしい。というか、手はいつ離して下さるのかしら。自分とは違う体温に、とても緊張してしまうのですけれど。こんな風に異性と手を繋ぐなんて、初めてだから……
目のやり場に困りながら蘭さんから視線を背けていると、運転席の方から「着きましたよ」と声を掛けられたので、先程と同じく彼にエスコートされて、白い外壁が少し西洋を思わせるその雑貨店へと足を踏み入れた。そこは、私の目に新しいものばかりが置いてあって、まるで絵本の中の世界のようだった。木造りの棚や机の上に敷かれたレース生地のテーブルクロス上にずらりと並べられた、様々なアクセサリーや雑貨に目を奪われ、私は思わず感嘆の声を吐き出した。
時間帯のせいか人も疎らで、私は人目を気にすることなくそれらに駆け寄る。
「ら、蘭さん蘭さんっ、見て、凄く可愛いわ!コレは何?うさぎさん……?」
「そちらは陶器の置物ですね。そちらのアニマルシリーズが人気です」
「へぇ、かわいい!」
茶色のふわりとした髪が愛らしい店員さんがニコニコと教えて下さったので、私は思わず顔を綻ばせて色々なところに目移りしてしまう。こんな店、初めて来たわ。こういうオシャレな雑貨屋さんでお買い物をするのは、ちょっとした夢だった。
「これはなぁに?容れ物、ですか?」
「はい、そちらはアクセサリーボックスですが、オルゴールにもなっています。下のネジを回すと鳴りますよ」
「わぁ、可愛い!きらきら星が流れるのね!考えた人はきっととても賢いんだわ!」
店員さんがふふふと笑ったので、私はそこでハッとした。いけない、はしゃぎ過ぎた……高校生にもなって、お店でこんなにはしゃぐなんて、きっととてもやかましい子だと思われたに違いない。恥ずかしい……
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名無 - 神すぎる。占ツクでここまで完成度の高い作品は久々に見ました。 (2022年2月13日 13時) (レス) @page25 id: 918f2226ec (このIDを非表示/違反報告)
桜妃(プロフ) - 作者様語彙力ありすぎでは…!?更新楽しみにしてます! (2021年9月6日 3時) (レス) id: 16f20e3b96 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴ子(プロフ) - はじめまして…こんなに作品に引き込まれたのは初めてです;;主様のペースで更新楽しみにしております! (2021年8月26日 12時) (レス) id: de92cbd6b8 (このIDを非表示/違反報告)
しいい - すごく好きです!続き楽しみにしてます!! (2021年8月26日 1時) (レス) id: 69df95b685 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 大っ好きです!蘭ちゃん…可愛すぎる…更新楽しみにしてます\(//∇//)\応援してます! (2021年8月25日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:子@さぶ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時:2021年6月30日 23時