俺はお前に毒された (ページ26)

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「うひゃーーーー！」
「うるせえ」

　驚かせようという意図が丸見えなシーンのたびに奇声をあげるこいつ。そして、声をあげた後は毎回俺の存在を確認する。

「いるよね！？花宮！え！？本物！？」

　などと言いながら触れるかどうかと、指先で俺の腕をつつく。鬱陶しいと思い、はじめはいちいち取り合っていたが、もうそれも面倒になり、されるままだった。
　あほらしいと思いながら最後まで視聴につきあった。やはりあほなのだ、こいつは。そういう確信を持つことが難くない様子に、どこか安堵していた。

　しばらくしてから、風呂に入るという。

「最悪だあ！見る前に入ればよかった！ねえ！一緒にはいろう！ね！？」

　ぎゃんぎゃんと、まさに病院に連れて行かれることを悟ったイヌのようにわめくこいつ。いい加減鬱陶しくなり、着替えを持たせて脱衣所に放り込んだ。脱衣所の中から「人でなし！」というような声が聞こえたが、そんなことは知ったこっちゃない。
　しばらくして諦めたのか、シャワーが流れる音が聞こえ、20分ほど経った頃にでてきた。

「花宮も入ってきなよ、服は多分あるし」

　出てくるやいなや、つかみかかられるかとも思ったが、存外静かにそう促してきた。部活で汗をかいていたこともあり、適当に近くのコンビニで下着を買ってシャワーを浴びることにした。コンビニに行くために家を出る際は「1人にするな」と駄々をこねられたが、ふりほどいて向かった。
　そして、シャワーを浴びてリビングに戻るとあいつがソファで寝息をたてていた。

「おい」

　声をかけてもぼけた声しか返ってこない。

「はこべ～」

　ようやくまともな言葉が返ってきたかと思うと、これだ。知るか、と一蹴しようとすると寝ていたのではないかと思うくらいの力で服を捕まれる。どうにも離す気はなさそうだったため、ため息をついて部屋に運ぶために担いだ。

　部屋は暗かったが、廊下の明かりで部屋の中がなんとなく見えたため、そのままベッドに運ぶ。力の抜けた身体をベッドに置き、手を離そうとした瞬間、襟元を掴まれ、体制が崩れた。

「同じ匂いだね」

　耳元で静かに囁かれ、全身の血管ががっと開くような感覚に襲われた。