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β-understand29 ページ29

焼けるような痛みが全身を襲う。が、それに紛れていつもの感覚が顔を出す。広がったのだ、俺の羽が。

 勢いのまま、迫ってきたヤツを吹き飛ばす。足が震え、血だまりを作っているA。開いたヤツとの差をさらに埋めるべく、ヤツの足下と天井を狙い、羽根を撃った。
 それと同時に血を吐きながらもケラケラと笑ったり、黙り込んだりするAを抱えてヤツと反対方向に進む。内側の連中と戦っているのか、俺への攻撃は全くない。次第に赫子の鎧がはがれ、Aの顔が見えてくる。

 「あ、やとく」

 聞き取れるぎりぎりの音量で名前を呼ぶA。ちらりと顔を見ると、目を細め、片側の口角をうっすらと上げた。

 「ごめん、結局なにもできなかった」


 一体何をしようとしていたのか、それは未だにわからない。しかし、しようとしていたことがもう達成できないということが、"できなかった"と過去形になっていることから察しがついた。それゆえに、しようとしていた事が何なのかを聞く意味も、必要もない。それでも、悔しそうに呟く声を聞いて、Aを抱える腕に力が入った。
 
 「おろして」


 その言葉にためらうと、いいから、と力の入った声で言う。あまりに弱々しく、それでも強く言うAの要求を拒むことはしなかった。
 ふらふらと立つこともままならない様子だが、目はしっかりと俺を捉えていた。

「ここで立ち止まってるわけにはいかねえ」


 先に目を向けてそう言う。今ここで止まって、話を聞くのは現実的にも難しい。ヤツがどこまで迫っているのか、どこから来るのかーーー。それらのリスクを鑑みても最適解ではないことは確かなのだ。
 そして、嫌な予感がするのだ。今ここで話されることは、布に墨が滲むように確実に黒を広げるに違いない。もう既に数滴落とされた黒が、まだらではなく全てになってしまう、そんな予感が。



「お願い、聞いて」
「後でいくらでも聞く、今は脱出するのが優せーーー・・・」


 口にAの右腕があてられ、言葉を遮られる。やめろ、やめてくれ。聞きたくない。聞き入れたくない。
 ゆっくりと近づくAの顔、ゆらぐ事なく俺を指すような目に、ごくりと喉が鳴る。左腕が俺の右腕を掴み、身体の距離が0になった。





「お願い、私を食べて」
 

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なっちゃん - すごく…すごく切なくて苦しかったけど、面白かったです…ありきたりなハッピーエンドじゃなくて泣きそうになったけどそこが良かった…この作品を作ってくれて、そしてちゃんと完結まで持っていってくれてありがとうございました…(;-;)この作品に出会えて良かったです (2021年10月8日 14時) (レス) id: ac8e88b096 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜舞(プロフ) - 更新遅れてしまい申し訳ありません(>_<)温かいコメント本当にありがとうございます!ちまちまですが更新再開する予定です! (2017年1月29日 22時) (レス) id: 1c3ca1ac8c (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 面白かったです。更新応援してます( ^ω^ ) (2017年1月21日 17時) (レス) id: 94c136b52e (このIDを非表示/違反報告)
ももニャン(プロフ) - 更新まってます! (2016年9月3日 22時) (レス) id: 4645770aff (このIDを非表示/違反報告)
K・M - このあとの展開が気になる!更新頑張ってください。 (2015年9月26日 22時) (レス) id: 6b3a0c3161 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:咲夜舞 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2015年3月28日 18時

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