β-understand28 ページ28
(迂闊だった・・・!)
がらがらと音を立てて瓦礫が盛り上がっては上から崩れていく。その音に混じってケラケラと渇いた笑いが耳に入った。顔がカッと熱くなり、じわりと脂汗がにじむ。そうだ、運良く先ほどは自我を取り戻したが、今のAはいつ内側から食われてもおかしくない状態なのだ。器であるAの身体が危機にさらされたことで、内側の連中をおさえる力が揺らいでしまった。
名前を呼ぼうと口を開いたのと同時に、勢いよく瓦礫の山が弾ける。顔もわからないほど赫子に固く覆われたAが飛びつき、それを涼しい顔でヤツは防いだ。赫子は翼のようにはっきりと形取られており、鱗赫は爬虫類のそれだが、2尾、3尾と分裂しながらヤツに向かっていく。
「ふふ、ふ、あはは」
眉1つ動かさずに応戦するヤツの様を見て、A、そして俺の息の終わりがちらつく。どうする、どうすれば引き離せるーーー。ぐるぐると思考を巡らせていると、ヤツに押され、Aが真横まで来る。痛みに引きずり込まれそうになった瞬間、ヤツの刃の焦点が俺に向く。
赫子で防ごうと力を入れる。しかし、じゅわっと、例えるならば鉄の塊に水が落ちた時のような、蒸発音とともに、これまでにない激痛が全身を襲った。
(防げねえーーー・・・)
かすむ視界でヤツを睨むしかできないでいると、目の前が赤黒く染まる。顔には熱い液体がかかり、刃は俺の前に立ちふさがったものを、中心から横に割いた。
「A!!」
ーーーーーボタボタ。ばしゃり。
「嫌だ、私でいたい」
割かれた所からはとめどなく鮮血があふれ出し、浅く息をするA。
「あはは、ねえ、ふふふ、たの、しいねえ、へへ、わた、わたし、えはは」
(死ぬ)
目の前の死。自分の終わりよりもさらに早く訪れようとしているAのそれに、臓器を貫かれるような感覚に陥った。肉体の死、精神の死。今どちらもこいつを蝕み、首に手を巻ききっている。あとはもう、少し力を入れるだけなのだ。
ヤツからの絶え間なく続く攻撃に、Aの翼が見る間にもがれていく。
(くそ、くそ、くそ・・・!出せ、出せ、今だけでいい!)
じゅわじゅわと力を入れる度に悲鳴をあげる背中。二度と飛べなくてもいい、今この瞬間だけ飛べることができさえすれば、それでいい。
「ーーーーーーっっがあ!」
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なっちゃん - すごく…すごく切なくて苦しかったけど、面白かったです…ありきたりなハッピーエンドじゃなくて泣きそうになったけどそこが良かった…この作品を作ってくれて、そしてちゃんと完結まで持っていってくれてありがとうございました…(;-;)この作品に出会えて良かったです (2021年10月8日 14時) (レス) id: ac8e88b096 (このIDを非表示/違反報告)
咲夜舞(プロフ) - 更新遅れてしまい申し訳ありません(>_<)温かいコメント本当にありがとうございます!ちまちまですが更新再開する予定です! (2017年1月29日 22時) (レス) id: 1c3ca1ac8c (このIDを非表示/違反報告)
ももタ郎。(プロフ) - 面白かったです。更新応援してます( ^ω^ ) (2017年1月21日 17時) (レス) id: 94c136b52e (このIDを非表示/違反報告)
ももニャン(プロフ) - 更新まってます! (2016年9月3日 22時) (レス) id: 4645770aff (このIDを非表示/違反報告)
K・M - このあとの展開が気になる!更新頑張ってください。 (2015年9月26日 22時) (レス) id: 6b3a0c3161 (このIDを非表示/違反報告)
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