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単刀直入 ページ45

言葉を探した。何か俺に言うべき言葉は、言わなければならない言葉はないのだろうかと。そんなものはないかもしれないと、あるわけもないんじゃないかと思いながらも、探すことをやめられない。疲弊し、何かにもがくように苦しそうな表情を浮かべている目の前彼女に、何か言葉をかけるべきなのではないかと思えて仕方がない。けれど、どれだけ探してもテーブルの上に音にするべき言葉の答えが置いてある訳もなく、足元にひっそりと隠れている訳もなく、結局は見つからなくて黙り込んでしまう。どうだっていいときは言わなくてもいいことばかり宣っているくせして、こういうときに限って言葉が見つからない。ここ最近痛いほどに思い知った情けなさがまた俺に募った。

大体、俺に何が言えるというのだろう。Aのことを何も知らない俺なんかに。Aのことを何も知らないくせに、自分の感情ばかりを押し付けようとしていた俺なんかに。こんな自分本意な俺が、何かを言ったところで、何になるというのか。どうにもならないだろう。

本当なら、俺はAにも、そしてAの母親にも合わす顔なんて持ち合わせていないのだ。


「……あの、こんなことを伺ってしまっていいのか、とても、迷ったんですが…」


思い切ってお伺いしてもよろしいでしょうか、と。不意にAの母親は俺に尋ねた。一体何を聞かれるのかと少し身構えながら、「はい」と頷いて先を促した。なんだか口が渇いてしまって、湯飲みに手を伸ばしながら。


「……では単刀直入にお聞きします。……坂田さんって、Aのことを好いてくださっていたりしますか…?」

「んぐっふ」


むせた。これはもう素直に言おう。むせた。吹き出さなかっただけ褒めてほしい。あまりに直球であり風穴を空けるようなドストレートな問い掛けに俺はこれでもかというほどに動揺してしまっていた。

まだ熱いお茶が変なところに入ったのか息が苦しく、俺はゲホゲホとわりと真面目に咳き込んでしまう。それを見てAの母親は「あ、あらあら大丈夫ですか…!?」と目の前でオロオロし始めた。俺は大丈夫だと言うように何度も頷きながら右手を前に突き出して見せた。

少しして、何とか持ち直し、改めてAの母親を見据える。


「え、えと……すいません…」

「いえ、こちらこそごめんなさいね、変な質問してしまって」


でも、聞いておきたかったんです、と。彼女は言う。とても切実な眼差しを俺に向けて。

大きな存在→←彼女のこと



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ピピコ(プロフ) - 獅子の子さん» しーちゃん!いつもありがとうぅぅぅ忙しい中来てくれてありがとうねぇぇえ返事遅くてごめんんん!!シリアスシーンは私もHPをすり減らしながら書いてるからね(笑)ちょっと更新お休みするけど戻ってきたらまた頑張るので、よろしくお願いします!!! (2019年8月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピー姉さん!続編おめでとうございます!リアルが忙しくてなかなかこっちに顔を出せなかったんだけど、久しぶりに来てみたら続編まで出てて...!嬉しいの極みです(≧∀≦) ピー姉が書くシリアスシーンの緊迫感が好きだぁ...無理せずに更新ファイトじゃ! (2019年7月14日 10時) (レス) id: af0bbdf801 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 追いつめられたときのキャラを書くときは自分でもダメージを負います(笑)二人の物語が今後どの方向に向かっていくのか、見守っていてくださると嬉しいですれ応援ありがとうございます!(*^^*) (2019年7月8日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - わわわっ……。もうー、これからどうなっていくのかドキドキですっ! 銀さんあんまり自分を責めないでっ。これからの展開がものすごく楽しみですっ! 応援してます! (2019年7月4日 18時) (レス) id: f38863f7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 桜さん» 桜さん!ありがとうございます!!ですね!銀さんと言えば銀色です!夢主ちゃんは何色がいいかな…。私も優しい銀さんがめっちゃ好きですし繊細な夢主ちゃんと不器用ながらも接してくれるのがすごくツボです(笑)そう言って頂けるとやる気が出てきます!頑張ります! (2019年6月5日 0時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2019年6月1日 22時

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