２４ 皇帝陛下と ページ27
「なんだ英智。帰ってなかったのか」
靴を履き替えた敬人が英智を見て言った。
なんでも、敬人は教室に忘れ物を取りに行っていたらしい。
「うん。今日は体調も良いから歩いて帰ろうかと思って」
「それならいいが…。倒れるなよ？」
「その時には敬人に助けてもらおうかな♪」
敬人はあからさまに顔をしかめた。それは、英智の体を心配してなのか、手をやくのが嫌なのか定かではないが。
まるでAが空気であるかのように会話が進む。Aも別にそれで良いと思っていた。
「じゃ、俺はここで」
「うん。また明日」
「また、ね…」
ここからは英智と二人きりだ。
英智と幼なじみといっても、そんなに遊んだ事がないからよくわからない。
「なんだい？よそよそしいね」
「そ、そう…かな」
いきなり声をかけられて驚いた。が、英智はそんな反応さえも楽しんでいるようだった。
「どうだい？最近」
英智がこう聞く時は大抵、親の仕事の話だ。
学院では英智と敬人しか知らないが、実はAは財閥の娘だ。
昔は地位も実績も上位で、そこそこに大きな財閥だったが、今ではだんだん低迷している。
「うん…。海外の大企業と契約が結べたって」
しかし、昨日の晩、海外から電話をかけて来た父親の声がとても嬉しそうだったのを思い出す。
「よかったじゃないか。そこからさらに地位を上げられるといいね」
英智は目を細めて笑っていた。Aも微笑み返す。
「…そしたら、政略結婚なんてせずにすむね」
英智は微笑を浮かべたままだが、Aは笑えなかった。
そう。Aと英智は許婚の仲だった。
低迷し、倒産寸前の企業を潰さない為にAの父親が仕組んだ事だった。
そんな事もあって、英智とは気まずかったのだ。
「もう、無理しなくていいんだよ」
英智は真っ直ぐ前を見据えて言った。
Aはその綺麗な横顔から目を離すことができない。
「それじゃあ。また明日ね」
気がつくと、すでに自宅の前にいた。
「あ…うん。また、明日…」
英智は最後までにっこりと微笑んでいた。
柔らかなクリーム色の髪が闇の中へ溶けていく。
「…英智！」
「？」
「あの…」
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水猫桜(プロフ) - ほたるさん» コメントありがとうございます！瀬名さんのツンデレ具合を上手く表現出来るよう頑張ったので、可愛いと言っていただけてとても嬉しいです！初のあんスタ作品ですが、楽しんでいただけたなら幸いです(*^^*) (2017年8月25日 17時) (
レス) id: 1dfbcfc948 (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 瀬名さん！！！可愛すぎかよ！！！完結おめでとうございます！！！ (2017年8月25日 16時) (レス) id: 836cda0430 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水猫桜 | 作成日時：2016年9月19日 13時
