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26 遠くに見えるもの ページ27

家に帰って買った物を改めて見てみる
服が多く見られるが、案外日用品も多い
殿下達が余計なものも勝手に買ったらしく、同じようなものが数個あったりもする

茨「買い物、楽しかったですか?」

『楽しいかどうかは分かりませんが、七種さまが有意義な時間を過ごされていれば幸いでございます』

茨「いや自分では無くて、貴方ですよ」

『私自身ですか?・・・それは、わかりません』

茨「そうですか」

『でも、何かを与えて下さったことに対してはお礼を言うべきです。ありがとうございました』

茨「いえ。人間、必要最低限のものは持っておくべきでしょうから」

『人間、ですか。そう、ですか』

茨「運ぶの手伝います。運び終わったら夕食の準備をお願いします」

『かしこまりました。ですが七種さまのお手を煩わせるわけにも参りません、私一人で』

茨「二人の方が早いでしょう?」

『・・・かしこまりました』

二人の方が早いなんてのは口実で、彼女の部屋を見てみたかっただけ
自分の部屋の一室を使っているということだったけれど、その時の契約の記憶が一切ないため、どんな部屋を貸したのか全く覚えていない

『手近のところに置いてもらって構いません、整理はあとで私がしますので』

茨「了解しました」

彼女の部屋は少し狭かった
俺が使っている部屋が通常だとすると、彼女の部屋はその一回り狭いくらい
部屋は殺風景で家具はほとんど置いていない
使っている寝具は古ぼけていたから新しいのを買って良かったと思う

ベットの横に紙袋を置いた
そこにさらに彼女が紙袋を置く

『ありがとうございました』

茨「閣下達にも伝えて下さい」

『はい。では夕食の準備を始めますね』

茨「えぇ、宜しくお願いします」

気づくのが遅かったほどに、何も知らない空野Aとの生活は
不思議なくらい穏やかにゆるゆると時が進んでいる様な気がする

『今日はサンマの塩焼きです』

茨「サンマですか、美味しそうですな!」

こちらが何を返しても表情は変わることは無い
自宅が一番休まるところであるべきなのに、彼女を意識し出してからは肩の力が抜けない気がする

茨「貴方は一体、誰なんですか」

『私は、空野Aです』

茨「えぇ!もちろん存じ上げておりますよ」

彼女がまとうものは俺と同じ胡散臭さでは無い

俺が自分になるように

彼女もなにか違う時があるのかもしれない

ずっと使用人の空野Aであるはずがないのだから

27 悔しいけれど事実→←25 誤魔化したところで


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作者名:ほたる | 作成日時:2020年8月10日 21時

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