兄貴のお気に入りに恋をした【灰谷竜胆】 (ページ17)

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｢メアド交換しとこうぜ｣
｢え？｣
｢そっちのが連絡とりやすいし、受け取る時はまた言う｣

女がバックから携帯を取り出すと｢じゃあ、これ…｣と
メアドを見せてくるのを自分の携帯に打ち込む。

｢お前名前なんだっけ？｣

｢東雲Aです｣ ※東雲=しののめ
｢ん、じゃそれで登録しとく｣
｢灰谷さんは林道(りんどう)？｣
｢お、覚えてんじゃん｣

｢漢字は？｣
｢花の｣
｢竜胆？｣
｢そ｣

｢綺麗な名前、女の私よりセンスありですね｣

ふふ、と笑う女に
｢お前じゃなくて、俺の親のセンスだろ｣
とつられて笑う自分がいた。

｢ちなみに兄貴は蘭｣
｢蘭?!竜胆と蘭…ご両親、お花好きなんですね｣
｢さぁ、知らね｣

そんな他愛の無い会話をしてまたバイクの鍵をまわす。

｢上のジャケットだけ返してもらうわ、そっちはよろしく｣
｢はい、また連絡してくださいね｣

(あ、俺からメールすんのか)

｢おう、またな｣
｢はい｣

俺はとある人物に連絡をする。
[今横浜駅なんすけど、外います？]
[近いよ。お前だけ？蘭は]
[俺だけです、そっち寄ります]

俺の知る世界は
そっちの平穏な方じゃなくて
こっち側なんだよ、たぶんこれからも。

さっきまでのことなど一気に吹き飛ぶ。
簡単に切り替えられる。
こっちのが“俺らしい”だろ、？