第三百四十一夜 震える手 ページ26
〜No side〜
――――その悲劇は、唐突に訪れた。
『嘘……だろ……?』
『本当だって!俺が嘘なんてついたことないだろ?』
得意げに話す男の言葉に、一人の男は驚いた様に目を丸くさせた。
『――財政官長が死んだなんて、本気かよ……』
「信じられない」とでも言いたげに、男は口元を抑える。
………それは、とてもとても悲しいニュースだった。
この村が財政破綻寸前にも関わらず、今までやってこれたのはこの財務官長のお陰だった。
行き過ぎる領主の税金の乱用を極限まで抑え、金の円滑を滑らかにしてきた。
……が、その中での財務官長の死亡。
歳も歳であったため、寿命だったという。
『このままじゃ、俺達おしまいだ……』
『噂では、これからもっと元黄桃村民に税がかかるそうよ。もうこれ以上税を増やされたら私達やっていけないわ……!!』
薄暗い部屋の中で元黄桃村民の不満の声は膨れ上がっていく。
『……こうなりゃ、仕方ねぇな』
一人の男の鶴の一声で辺りはシン…と静まり返った。
声を放ったのはこの元黄桃村民の中で今一番発言力を持つ若者だった。
若者は紙とペンを握りしめていた。
よく見ると、若者の手は小刻みに震えている。
『アンタ、まさか……!』
『駄目!数日前言ってたじゃない!そんなことしたら、私達は………!』
小刻み震える若者を見て、元黄桃村民はそれを止めようと彼に語りかける。
……しかし、彼の目はもう覚悟を決めていた。
『仕方ねぇだろ…っ。俺達の今と、未来のためなんだ……っ。やるしかねぇ、やるしかないんだ!!』
若者はそういうと、紙にある事をスラスラと書き始めた。
泣く者、拳を握りしめる者……。
でも、誰もその行為を止めなかったのは彼らにはそれしか方法がなかったからだろう。
彼らは勘づいていた。
……いや、もう分かりきっていた。
この村が、もう駄目だということを。
.
――――この村の領主を、消さねばならぬと。
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厨二乙(プロフ) - ゆいさん» コメントありがとうございます!明日までには続編をつくる予定です (2016年8月10日 15時) (レス) id: 7e18410e1e (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 続きがきになります(*´∀`)ワクワク更新頑張ってください(*´ω`*) (2016年8月10日 15時) (レス) id: 4f1d10fb33 (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - そらさん» つまんないは言い過ぎじゃない?もう少し言葉を選んだほうが良いと思う (2016年8月8日 23時) (レス) id: f2ab9f97c5 (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - そらさん» つまんないは言い過ぎじゃない?もう少し言葉を選んだほうが良いと思う (2016年8月8日 23時) (レス) id: f2ab9f97c5 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - 厨二乙さん» 良かった!楽しみにしてます!(((o( ˙-˙ *))o)))! (2016年8月5日 20時) (レス) id: a582850307 (このIDを非表示/違反報告)
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