34ばんめ ページ35
碧棺左馬刻の後ろから、兄ちゃんの声が聞こえた。
急いで帰ってきたのか、顔が赤く、息切れをしている。
「「兄ちゃん/いち兄」」
兄ちゃんは今、三郎に抱っこされているAを見ている。
黙って、Aの前まで行って、三郎にAを下すように言った。
下ろされたAは何がなんだかわからない顔をしている。
兄ちゃんがAの視線に合わせるようにしゃがむ。
「にぃちゃ、」
おどおどとしながら、手を伸ばし、兄ちゃんに抱きつこうとした。
でもそれは、感動の再会かのような、やさしいものじゃなかった。
ぱし、と乾いた音が響く。
何が起こったか、理解するには少しだけ時間がかかった。
兄ちゃんが、Aの頬を叩いた音だということに。
その光景は、あの碧棺左馬刻も入間銃兎も驚いたらしい。
じんわりとAの頬が赤くなる。
叩かれた本人も驚いて、ぽかんと兄ちゃんを見ていた。
「A、俺が何で叩いたか、わかるか?」
「にぃちゃ…」
「なんで兄ちゃんが怒ってるかわかるかって言ってるんだ」
俺たちが喧嘩しても、ここまで怒ることはなかった。
兄ちゃんは相当怒ってる。
俺も三郎も、あまりの怖さに思わず息を飲んだ。
「…俺は、Aのことを嫌いで言ってるんじゃない」
兄ちゃんはしゃがんで、Aに言った。
そして、Aを引き寄せて抱きしめる。
「無事でよかった……ッ!!」
きっと、兄ちゃんは泣きそうなんだと思う。
なんでかっていうと、その声は震えていたから。
絞り出すように出た声は、Aにも聞こえたみたいで、首を横に振って兄ちゃんの言葉を否定している。
「にぃちゃ」
「ごめんな…っ…A、つらいこと聴いちまって…」
「ちが、Aちゃがっ、Aちゃがわるいのっ……」
Aが兄ちゃんを抱きしめ返して、ボロボロと泣き出した。
そんな二人の後ろ姿を、俺と三郎、MTCの二人は黙って見ているだけでいた。
1174人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
劉(プロフ) - ヒプマイ沼ハマさん» 特に深い設定はつけてません。ただ、虐待を受けている影響を表せたらいいなと思いそういう喋り方にしています。 (2019年9月23日 0時) (レス) id: 3d81b48405 (このIDを非表示/違反報告)
ヒプマイ沼ハマ - うちの知り合いの子は四歳でもハキハキ喋りますけど、これはどういう設定で? (2019年9月22日 23時) (レス) id: cd1a846ab2 (このIDを非表示/違反報告)
劉(プロフ) - 南さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです。更新遅めですがお付き合いしていただけると嬉しいです! (2019年6月26日 22時) (レス) id: 3d81b48405 (このIDを非表示/違反報告)
南 - 夢主ちゃんがめっちゃ可愛いっすめっちゃ可愛いっす(大事なんで二回) 今から続編を読むので続編はどんな感じなのかなとワクワクしてます! これからも頑張ってください!! 長文失礼しました。 (2019年6月25日 21時) (レス) id: d0756aba1a (このIDを非表示/違反報告)
劉(プロフ) - 夢花 (仮垢)さん» そう言ってもらえてめちゃくちゃうれしいです…!ありがとうございます!!ちゃんとラストは幸せにするつもりですw (2019年1月17日 21時) (レス) id: d886c652ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:劉 | 作成日時:2018年9月8日 9時