【番外編】続き ページ44
ぐっと、つま先に力を入れて止まる。
「っ？…Aちゃん？」
今ワイシャツくらいしか着てないし、ボタン何個か外れちゃってるし、寒いし、先輩早く来てくれないし…。
言いたい事がありすぎて…。
『…もうやだっ…。』
せっかく風にあたって涙が乾いたのに、またポロポロと涙が溢れて止まらない。
すると、不意に、頭から温かいものが被せられた。
薫先輩のブレザーだ。
この匂い…なんだかんだ言って、やっぱり安心できるのは薫先輩なんだって教えてくれるような…、そんな優しい匂い。
ひとつひとつ、こうやって思うだけで…涙ももっと出てきてしまう。
私ってこんなに泣き虫だったっけ。
「…Aちゃん。助けに行くの、遅れてごめんね。」
やだ。そんな悲しい音色で言わないで。
『…先輩はっ、薫先輩は…。』
スカートのポケットに入れておいた零先輩のピアスにスカート越しに手を当てる。
「…ん？」
『薫先輩は、縛られるのが嫌って言ってたからっ…そのっ、どうしたらいいかわからなくて…。』
「うん。」
『でもっ、やっぱり私以外の女の子といる先輩を見ると胸が苦しくって…。』
「うん。」
『今日だって、怖かったのに先輩来るの遅いから…。』
「うん、ごめんね。」
『謝らないで下さいっ…。ほんとはっ、本当は、ちゃんと言えなかった自分のせいなのにっ！…もう嫌だ。こんなこと言いたかったわけじゃないのにっ！…先輩に嫌われたくないのにっ！』
ぎゅっと、包み込まれた。
力強く、痛いくらいに。
「…俺ってば、Aちゃんに心配かけ過ぎてるね。」
ふるふると頭を横にふる。
「ごめんね。…でも、絶対にAちゃんのこと、嫌いになんてならないから。」
この言葉だけで、さっきのことが全部記憶から消されてくような、そんな気にさせられてしまうほど、私は薫先輩に惹かれているんだなって思う。
「…Aちゃんになら、縛られてもいいよ？」
『…先輩って、エム…ですか？』
「えぇ〜。Aちゃんはこんな空気なのにブレないね。まぁ、そんなとこも好きだよ。」
『…わ、私も好きです。』
ーー《裏話》ーー
『今さらですけど、私、ブレザーと鞄置きっぱです。』
「そういえばそうだね。」
『・・・。』「・・・。」
『晃牙先輩、呼びます？』
「そうしよう。」
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作者名：瑠美帆 | 作成日時：2016年9月15日 17時
