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【水】の血鬼術 ページ2

ドォォォン…


「ッ…なんだ!?」


煉獄は音のした方を振り返った。
それはさっきAと別れたところからそう離れていない場所だ。

(あっちか…!)

煉獄は堰を切ったように走り出す。

間に合ってくれと、願いながら。


「A少女!」


煉獄が着いたときには、既にAの姿はなかった。
食べられたのか、と焦る煉獄は、必死にAのものを探す。

すると、鬼の巨体の下に白い腕が覗いているのを発見した。その手には文字の刻まれた漆黒の刃。
その腕は赤く染まり、じわりと血が広がっていた。

(間に合わなかったか…!?)

怒りと後悔の勢いで煉獄は刀の柄に手を掛けた。

その時。


「血鬼術──流水暴」


か細い、死に際のような声が聞こえた。
煉獄はその声に刀を抜きかけていた手を止める。

次の瞬間、鬼の大きな体が持ち上がり、空中でバラバラになる。

(水に貫かれた…?)


「はぁッ…っ、ぅ…」


そんな鬼の巨体の下にいたAは、日輪刀で自分の体を支えて立ち上がった。

雨と一緒に鬼の体が辺りに降り注ぐ。
赤く染まった雨は、Aの白い肌を染めていく。

立ち上がったAは、震える足に鞭を打ち、真っ直ぐと立ち上がる。
息も絶え絶えにこちらを見たAの瞳は、赤く光っていた。


「煉、獄…さ…」


煉獄がそんな『鬼』の状態のAに目を奪われていると、彼女は鈴のような、桜の花弁が散るような声で自身の名前を呼ぶ。
そして糸が切れたように倒れ込んだ。


「A少女…!」


Aが倒れる前に体を支えた煉獄は、Aの華奢な体を背中におぶり、藤の家を目指す。
確かこの山を下りたところに一軒あった筈だ。

(生きてくれよ…!)

Aの助けようとした人間は助からなかったが、それがAが命を落とす理由にはならない。
それに、最初は鬼だからとAを警戒していたが、今となってはその気持ちは微塵もなかった。

目の前で命懸けで人間を助ける姿を見てしまった。その姿は、人間と変わらない美しさがある。

人間が潰れないように覆い被さる。人間でさえ、他人を助けようとしないこの世界で、鬼である彼女は容易にそれをやり遂げる。

人間への食欲も少なからずある筈なのに、血塗れの虫の息である人間を目の前にしても、その命を助けようと体を張る。
それこそ正しい『人間』の在り方だ。

見てくれも、世間体も気にせず人間を守る姿に、ひどく心打たれたのだ。
死さえ恐れないその姿に。


「すまないっ…!この子を、彼女を助けてくれ…!」


煉獄は灯りの消えかかっていた藤の家に滑り込んだ。

人間になることは許されない→←炎柱との初任務


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松々先輩(プロフ) - 三月の専属ストーカーなつめみくさん» ありがとうございます!また書き始めますので、これからもよろしくお願いいたします。 (10月13日 17時) (レス) id: 5b61614070 (このIDを非表示/違反報告)
三月の専属ストーカーなつめみく - あっ…すき。 (10月13日 16時) (レス) id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:松々先輩 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2022年9月28日 12時

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