カラッポ【カラ松】

Twenty eight episodes ページ31

ズカズカとおそ松の家に上がって近づいてくるカラ松
握り締められた拳は、ワナワナと震えていた


「か、カラ松……？」
「honey、帰るぞ」
「待って！待ってカラ松！！痛い！痛いって！！助けておそ松っ……！」

カラ松おかしくなっちゃった？
ねぇ、なんで怒るの？私なんかどうでも良いくせに


愛してないくせに。好きじゃないくせに


私のことほっといては、くれないの？



「おそ松！！怖い！！」
「おい待てカラ松！！」
「……」


おそ松の呼びかけに停止したカラ松
振り向かずにそのまま前を向いたまま


心なしかさっきより強く握られた腕が、ジンジン痛む


「カラ松……？」
「…俺が、言えることじゃないかもしれない」
「……？」


ボソッと呟いた声は、とても低くて、聞き取るのに時間がかかった


「俺が、言えることじゃないかもしれないが……」


おそ松。とハッキリ呼ぶカラ松

振り向いた顔は、なぜか苦しそうに、泣きたそうに微笑んでいた


「お前…honeyを幸せにできないだろ」
「！」
「は、何言って……」


……ううん、そうだよね
違う、というふうに私を見るおそ松に微笑みかける


ぽろっと零れ落ちた涙は、私の頬をツゥッと伝った


「おそ松は…私のこと、好きなんじゃない。可哀想なんだよね」


私が、可哀想だから


愛してるとしか言われなくて、好きだなんて言葉聞けなくて

愛を信じることなんてできないし、体の痛みは消えないし


そんな私が可哀想だから

おそ松は、私のこと好きなフリしてくれてたんでしょ


全部わかってる
子供じゃないんだから


「……押しかけてごめんね、おそ松。私、帰るから」


もういっそのこと、愛なんて考えないで、好きなんて捨ててしまおうか


バイバイ、と手を振るけど、感情を無くしたような目は私を捕らえることはなかった


この世界は残酷だ


誰も私を愛してくれない
私が愛した人はみんな私に好きをくれない
誰も私を理解してくれない



それでも私はカラ松が好きで、一松の気持ちには答えてあげられなくて


それでも世界は何事もなかったかのように回り続ける


「…カラ松……好きだよ」
「あぁ、俺も愛してるぞ。honey」


いつも通り、時が過ぎて
いつも通り、何もなくて


そして、日常の中死ねるなら



それ以上望むものなんて何もない



「……えぇ、私も……」



好きよ、カラ松


あなたがどんなに私を好きになってくれなくても＿＿＿＿＿

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