秘密裏 ページ29
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「ロシアはもう、オリオンに従わないの?」
にわかに信じ難い話だが、ユーリの目に嘘はない。それは監視役としての選手を見る目を持っているAには疑うまでもなく分かった。恐る恐る問いかければ、ユーリとルースは頷き、マリクが前に出る。
「フロイさんと一緒に説得して、ユーリやチームのみんなにも分かってもらえたんだ!もう卑怯な手は使わない、ベルナルド様の指示にも従わないって!」
両手を横にめいっぱい広げて、ロシアチームの意見が一つに一致し、共にオリオン打倒の旗を掲げることになったのだと嬉しそうに説明をするマリク。その小さな頭に、ぽんっとルースの手が乗せられる。
「でも大丈夫なの?確かにユーリくん達がオリオンに背いたことは日本にとっても喜ばしいことだけど、チームを追放されたりするんじゃ.......」
以前のロシア戦では、オリオンに背けば自分達の地位が危ぶまれてしまうという理由から従わざるを得ない状況にまでユーリたちは追い詰められていた。
あの頃と何かが変わったようには思えないAは、その面でロシアチームを懸念している。
「その心配は入らない」
「ルースくん?」
だが、そんな彼女の不安をまたもルースが否定した。再開してから一ミリも感情の変化は見られなかったが、ほんの少しだけ微笑んでいるようにみえる。元々感情表現が乏しいのだろうか……とAは思う。
「今のオリオンの目的は、イナズマジャパンを徹底的に潰すことにある。ロシアは見ての通り、全員が全ポジションを担うチーム。僕達が背いたとしてもわざわざ強力な選手を抜くようなマネはしないだろう」
「確かにそうかもしれないけど……」
マリクのように生活がかかっている者もチームの中に入るはずだ。Aの不安は拭えない。するとルースは静かに目を伏せると、マリクの頭に置いていた手のひらをAに向けて話を続けた。
「それに、オリオン内部の機密情報は既に新条さんが手に入れたとの報告も受けている。君のチームメイトである吹雪士郎と一緒に、今は行動中だ」
イリーナが国際警察に逮捕されるも時間の問題だ、とルースは云う。試合が開始される前にVIPルームに突入するという作戦と手配はすまされているようだ。
「吹雪くんと...?」
吹雪と新条が秘密裏にオリオンの野望を暴こうとしていた事実を知らなかっただけに、A自身あまり実感がないような顔をしていた。
(ってことは、つまり)
(あぁ。決勝戦は、お互い正々堂々と戦える)
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年10月15日 21時