夕日暮 ページ30
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ロシア代表が決勝に進出。
一時は啖呵を切ってチームを抜けたわりに、フロイは普通にチームと打ち解けている。
一星が「とりあえず、決勝進出おめでとう……と言っておくよ」と、フロイに声をかける。奥の方にはAと話すルース達が見守るように立っていた。
「ユーリ達とは和解できたんだね」
「ああ。今のロシアは、あの時より強いよ」
「……次の戦いが終われば、すべてが解決する」
「最高のサッカーを世界に見せよう！」
オリオンの闇を照らし、本当のサッカーを取り戻す約束を決勝の地で果たそうと握手を交わし合う二人。一星もフロイも、かつてはオリオンに救われ、そして今は反発するもの同士だ。
｢そういえばAとは上手くいってるの？｣
｢なっ…何言い出すんだよいきなり！｣
話の趣旨があらぬ方向へとズレる。マリク達と会話に花を咲かせるAの姿を一瞥した後に振られた話題に一星は、かああぁ…っと顔を赤く染め上げた。
｢あっははは！その様子だともしかして振られた？｣
｢……｣
｢え、あ……うそ。もしかして図星？｣
冗談まじりに呟いた何気ない一言は一瞬にしてその場の空気を凍らせた。一星の頭は徐々に俯き、やがて何も話さなくなる。そんな親友の姿に血の気が引くような思いにかられたフロイは、頭に冷や汗をかいた。
｢ご、ごめん光！そうとは知らずに野暮なことを……｣
｢違う｣
｢え？｣
｢振られたんじゃないよ｣
取り繕うフロイの言葉を遮り、地面に向かって吐き捨てた一星。きょとんと目を瞬かせるフロイの瞳に映るのは、覚悟を決めたような芯を持った強い眼差し。
｢やっと、Aさんに本当の一星光としての俺を見てもらうことができたんだ。スタートラインに立ったんだ。…だから俺は振られてないし、諦めてもいない｣
｢光……｣
胸に手を当て、恍惚とした法悦の輝きをあどけなさが残る満面に浮かべながら一星は、自分の想いを打ち明けた。凝り固まっていたフロイの相好も崩れていく。
｢それが光の本当の想いなら、僕は君を応援するよ｣
｢えっ……でもフロイは俺たちのこと｣
｢Aが君を見るようになったのなら、話は別さ｣
困り果てたように眉を八の字に寄せたフロイは、憎らしいくらい空一面に美しく広がる夕暮れを見上げる。
淡青(うすあお)く晴れ渡った寒空には、姿を没した夕刻の日差しが茜色の後光を射して輝いていた。
(これからは親友として、光を応援させてほしい)
(フロイ……ありがとう！)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年10月15日 21時
