未完成 ページ13
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状況は選手達の想像を超えるほどにまで深刻化していた。イタリアのサポーターがネックとなり、日本の行動も絞られているのだ。
「それを防ぐためにグリッドオメガで試合を終わらせようとしたのに」
明日人が不発に終わった救出作戦を振り返った。
「グリッドオメガを出されたのはこちらにとって誤算だったけど」
後から付け加えた野坂に、一星が続ける。
「俺たちを棄権させられなかったのは、向こうにとっても誤算だった」
両チームとも、イタリアの肉体的なタイムリミットに焦っているのは同じだ。灰崎はダメージが尾を引いている。「痛むのか?」小僧丸が問いかけると、灰崎は舌を鳴らし、顔を顰めたまま気合で持ち直す。
「どうすんだよ。このままじゃ、やつらは再起不能、オレたちも負けるって最悪の展開だぜ!?」
時間が刻一刻と迫り、誰もが諦め半分に苦悩していた中「策ならある」豪炎寺が途端にそう言い出した。
「ラストリゾートだ」
虚をつかれたような顔で驚く明日人たちに、豪炎寺はさらに「ここからラストリゾートで逆転する」と宣言。
「ついに…ついに豪炎寺さんのラストリゾートが、目の前で見ることができるんですね!?」
小僧丸が目を輝かせて身を乗り出す。人生を大幅に変えてしまった、山篭りの洞窟の中で見たラストリゾートを、今度は最前列で目に焼き付けられるのだ。喜ばないわけがない。
「いや、やるのは俺じゃない。」
しかし、小僧丸の希望は絶たれてしまう。豪炎寺は、稲森、野坂、灰崎の三人に継承したラストリゾートでイタリアとの試合に終止符を打つつもりらしい。
「でも、俺たちのラストリゾートはまだ未完成で」
明日人の言葉に、豪炎寺は不敵に笑う。
「未完成? だったら今ここで完成させればいい」
灰崎は旧雷門ビッグスリーが毎度無茶振りしてくることに呆れて見せるが、一方でそれがいいとばかりに目を見開いて「面白ぇ!」と舌舐めずり。
「豪炎寺さんのラストリゾートは、既にアジア予選で見せています」
野坂はごく冷静に、ラストリゾートはすでに世界で披露した技であること、グリッドオメガを習得されていたことを踏まえて、ラストリゾートも打ち返される可能性を提示。
「そうだ。この試合をひっくり返すには、ラストリゾートを超えるラストリゾートを打つしかない」
一星を含む四人が頷く中、小僧丸はどこか不満げな様子だ。豪炎寺のラストリゾートが究極の技ではないかもしれないことが気に入らないのだろう。
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年10月15日 21時