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歯車 ページ43



灰崎から外で待っているように告げられたヒロトとAは店の裏手側に存在する広場にやってきていた。辺りはすっかり日が落ち、観光客の姿もめっきり減り、広場には二人以外のものはいない。

「邪魔だ、ど真ん中座るんじゃねえよ」

「悪いけど今は光くんと電話中なの。向こう行って」

開口早々の一言に、スマホを耳に当てていたAがムッと唇を尖らせて文句を言う。

「……あ、ううん平気よ!ヒロトがちょっとね。でも追い払ったから大丈夫」

犬を片手であしらうように追い払う仕草を見せたAは、構わず電話で話を続ける。その態度に腹を立てたヒロトの眉間に皺が寄せられた。

「それで、さっきの話だけど……」

「一星?なんの用だよ」

「あんたには関係ないでしょ。今電話中なんだから、一々話しかけてこないで」

ふいっと顔を逸らし、またスマホを耳に当てる。昨日や今朝のこともあり、まだどこか煮え切らない気持ちが残っていたAは、ヒロトの心中など気にも止めず、楽しげな様子で一星との電話に集中する。

「貸せ」
「え……わっ!」

我慢の限界を迎えたヒロトが、Aの目の前で仁王立ちをすると手にあるスマホを奪いあげた。

「ちょっと何すんのよ!!」
「……」
「返してよ、もう!」

電話は強制的に切られ、腹を立てたAが立ち上がったその時。いきなり、体が後ろへと勢いよく引っ張られるような感覚に襲われた。

衝撃と同時に背中に固いものが当たる。視界が暗闇に包まれ、痛みに顔を歪めたAが目を開けた時には、ヒロトの顔が至近距離にまで迫っていた。

「(なに?この体勢....)」

働かない思考を回転させて、状況を整理する。ヒロトはベンチに片膝と手をついて、横たわるAに覆い被さる様にして見下ろしていた。そしてヒロトの表情も不機嫌である。

「一星がお前にかけたのか」

「違うわよ。何か買っていこうと思って電話したの。……っていうか退いて、邪魔」

顔色一つ変えずに、キッパリと言い放つ。普通ならばときめく様なシチュエーションも、Aには不快でしかない。「光くんが待ってるんだから」そう言うと、ますますヒロトの顔が曇った。

「あんたね、嫌がらせするのもいい加減に…!」

「お前……灰崎と一星、どっちが好きなんだよ」

いきなり何を言い出すんだ。

真剣な表情で告げたヒロトからの突然すぎるその言葉に、Aは理解する間もなく「…は?」と間抜けな声を出す。その声は 静寂とした広場に響き渡った。

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設定タグ:イナズマイレブン , 吉良ヒロト , 灰崎凌兵   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:小雪 | 作成日時:2019年9月18日 14時

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