気づいちゃったよ… ページ2
遠くの方から先ほどと同じような音をたてながらお昼の終わりを告げる音がなる。
(そろそろ来てっかな…)
心の中で淡い期待を抱きながら明るい世界に背中を向けて薄暗い工場に向かう。
だが、工場に着いた途端にわかった胸に抱いた淡い期待など意図も容易く砕け散る。いるはずもなかった。また午前と同じように頭の中で悩ませながら淡々と作業をする。
何日経った頃だろうか仕事が一段落つき、数日ぶりに家帰れることになった。
さっさと済ませ帰路に向かう。
(あれか…工場じゃなくてもあいつなら俺の家にいるな。)
と寂しさを紛らわすかのように心にそう言い聞かせながら早足で家に帰った。
ガチャッ…と古びたアパートのドアをあける。
(いつもみたいに……)
だが、中は暗く人がいる気配なんてしなかった。小さくため息をつきながら渋々中に入る。
風呂に入り夜ご飯を食べ寝る準備……久々の家での就寝。
「いつもはあいつに邪魔されるからなあいつはいないから今日はゆっくり寝れるぞ」
さぁて寝ようと布団に潜るといつも違う感覚に違和感を憶えた。
(あれ……こんなに冷たかったっけ…あれ……こんなに広かったっけ…)
考えれば考えるほど心の穴は大きくなるばかりだった。ふいに視界が歪んでることに気づく。「あれ……なんで、泣いて…別にあいつのことなんて…」
強気で一人の空間に言い放ち。布団に潜る。朝になれば来る。と心に言い聞かせながら襲いかかる睡魔に身を預けた。それか数日経った…納期の商品を取りに来たのは別の人だった。
あれから何日?いや…何ヶ月?経ったか?忘れた……。
何回春がきて。何回夏がきて。何回秋がきて。何回冬がきた。
もう心が空っぽだった……それと同時に気づきたくない後悔にも気づいてしまった。
「……好きだった……のかな……」
頭が可笑しくなったのかもしれない。一時的な感情かもしれない…それでも俺はあの人を忘れない日はなかった。
「もう…これは間違いだろう何だろう認めるしかねえな……好きだった…クソ野郎……」
誰にも伝えることなく本人に届くことなく心に留まる感情。
気持ち悪い重い。けれど、俺はそれをその人と繋がり…鎖と思って墓までもっていくことにした。
…その日は憎くもあの人みたいに爽やかな青空に淡いピンクの桜が咲き誇るあの人を待って何回目か忘れてしまった春の日の出来事だった。
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作者名:誘宵 | 作成日時:2017年8月12日 2時