七種茨といちゃつきたい(手抜き) ページ17
「……。」
カタカタとパソコンのキーボードを叩く音だけが響く部屋。私は彼の背中を見つめながら布団と枕と仲良くしていた。
「………。」
寂しいが邪魔をしてはいけない。けれど寂しい。スマホも見飽きた。仕方なくイヤホンを抜いて目の前にいる彼氏のソロ曲を垂れ流し始めた。
「…うるさいですよ」
「流石に自分の曲を雑音みたいに扱うのはどうかと思うよ。私相手に謙っても仕方ないでしょ」
「違います。貴女の視線がうるさいと言ったんです」
「それは、ごめんって」
視線がうるさいって。もう居るだけで邪魔じゃん。いやまぁ、押しかけたのは私だけどさ。
頑張ってるんだなと髪が揺れる度、ちょっと顔を傾けた時に視認できる綺麗な横顔が見える度、見逃してはいけないとちょっと神経を尖らせすぎた。唯でさえ過去のせいで過敏なのだろうから。
枕に顔を埋める。流石に帰ろうかなぁと悩んでいるとベッドが軋む音と共に不自然に沈んだ。
横を見ると頭を撫でられた。
「ん……？あれ、お仕事は？」
「…はぁ。構って欲しいなら素直にそう言えば良いんですよ。仕事は大事ですが目の前の彼女を悲しませてまで進めなくてはならない程、急ぎでもありませんし」
「んーでも、茨にとってあれは大事なことでしょ？」
スリープモードに切り替えられているパソコンを指さして言う。大切な人の夢だからこそ邪魔にはなりたくないのだ。それも私情で。
「何度言えばわかるんですか。…俺にとって1番大事なのはAだっていつも言ってるだろ？」
目をしっかり合わせて話してくれる。
そこそこ長い付き合いで気が付いた癖である、素の時に出る俺という一人称に真剣な表情が裏付けされる。
「いつも…そんなこと、言われてないよ」
だから目を逸らして枕に顔を埋めてありがとう、と言うのが精一杯だった。
しかし突然枕を横から取られてしまう。無防備になった照れ顔を見られてさらに顔が熱くなる。
「ほら、そんなものに抱きついてないでこちらへどうぞ？勿論無理にとは言いませんが…断りませんよね」
こちらへと言いながら両手を広げてくる。大人しく抱きついてしまうから甘えん坊は治らないのだろう。
「こうしたら顔見られなくて済むね」
「それは困りましたね」
と言いながら全然困ってない笑顔で目が合う様にうずめていた顔を動かされる。
端正な顔が近付いてきて唇が触れる。初めてでは無い筈なのに体勢のせいか妙に恥ずかしくて抱きつく。
こんな時間が続けばいいと思った。
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作者名：ぽあぷるーじゅ。 | 作成日時：2017年8月13日 16時
