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柱の影に隠れながら実弥の元へ向かう。
胴体にざっくり傷があり、苦しそうに自分で縫っている。
またこんなに傷ついて。
『実弥…!』
駆け寄るわたしをチラッと見るけど、特に驚く様子もない。
大きなため息をつく。
実「玄弥に次いで馬鹿かよテメェは。」
『わたしが縫うから黙って呼吸整えて。』
実「…大丈夫なのかァ?」
『え?』
実「こんなところに来ちまって。」
『…もう、大丈夫。
こんな状況でも心配してくれるんだね。』
実「うるせェ。帰れと言うつもりだったが、何言っても聞かねぇのは顔見ればわかんだよ。」
『うん。…はい、終わり。』
実「もう終わったのか…悪ィな。」
『止血済んでたからね。』
こんな傷、見たことない。
少しでも腹部に打撃を受けたらきっと内臓が飛び出る、というかもう破裂するだろう。
そんなギリギリで、まだ削られてもないあの鬼とまた対峙するのか。
実弥はどんな状況でも休まず戦うだろう。
わかっていても、行かないでほしくなる。
実「オイ…だから、俺は死なねェ。
心配されるほど弱くねェし、お前は勝手に自分の心配でもしてろォ。」
『わかってる、でも…』
伝えたいけど、うまく言葉にならない。
悲鳴嶼さんが一人で頑張ってるんだ、早く戦線に入らなきゃいけない。
と、スッと頭に伸びてくる実弥の手。
実「…わかってる。言葉にしなくて良い。」
『…え?』
実「顔に出てんだよ。
俺たちはお互いいつもうまく言葉にできねェだろ、ならしなくて良い。」
『それでもっ』
ふんわり、抱きしめられる。
大きく息を吸い呼吸を整える実弥。
実「良い、ここから出るまで取っておけ。」
身体を離すと、実弥の頬に、痣が。
『実弥、ほっぺた。』
実「あァ?」
『痣。』
実「あァ…だからか。身体が軽い。」
『…玄弥くん、頑張ってるね。実弥を守るためだって。』
実「…ったく、お前も玄弥も本当に馬鹿だなァ!」
そう言って走り出す実弥。
わたしも呼吸を整えて、刀を握り直して。
全力で走り後ろに続いた。
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金平糖 - うぅ...感動しました... 一気読みしたんですが、一気読みしたからこそ凄く感動しました。こういう系の話には弱いので、、、 (2021年10月2日 23時) (レス) @page45 id: f3f7dadf62 (このIDを非表示/違反報告)
雪乃 - 不死川の夢小説少なかったのでとても嬉しかったです!出来れば続編も読みたいです、お願いします。一つ…鬼舞辻が鬼゙無゙辻になってたので、そこは直して頂きたいですね。 (2020年12月11日 7時) (レス) id: cedaea8f17 (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - ろこもさん» 完結おめでとうございます!素敵な作品でした!実弥と夢主が幸せになれて良かったです(はぁと)ろこもさんも大好きです!ありがとうございました! (2020年8月7日 5時) (レス) id: abbc87cbf8 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - 我妻ライさん» 我妻ライ様!返信遅れてしまいすみません!絶叫嬉しい限りです!元気が出て頑張れました!!読んでくださりありがとうございます! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
ろこも(プロフ) - かぼさん» かぼ様!返信遅れてしまいすみません…!一気読みありがとうございます!実弥さんを表す文章力が足りませんが、より好きになるお手伝いができれば嬉しい限りです…ありがとうございます…! (2020年8月7日 0時) (レス) id: ef1ad6d2c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろこも | 作成日時:2020年7月7日 22時